ロンドン五輪に伊藤正樹(23)=金沢学院大大学院=、岸彩乃(19)=同大=の2 選手が出場するトランポリン王国石川。国内の競技人口が1万人と言われる中、石川は約 3500人と日本一を誇る。県内にトランポリンを持ち込んだのは塩野尚文同大名誉教授 (72)。48年前に新米教諭の塩野氏が高校で創部したニュースポーツは石川全体に裾 野を広げ、着実に高めてきた頂は世界を望む。  塩野氏がトランポリンと出会ったのは1960(昭和35)年。競技の考案者である米 国のジョージ・ニッセン氏が普及のため日本を訪れた翌年である。  天理大の器械体操部に所属していた塩野氏は「ウルトラC」の練習用にトランポリンを 使い、その魅力に取りつかれた。  「自分が全国にトランポリンを広めよう」。そう決意し、大学卒業後に教師として石川 へ帰郷。64年に飯田高でトランポリン部をつくり、74年には県協会を発足させた。  このころ塩野氏は、一流選手を育てる必要性を感じ始めていた。スター養成のために塩 野氏が選んだ道は、競技人口の拡大だった。「裾野が広ければ頂は高い。競技人口を一人 でも増やすことが、有望な選手を見つける近道になる」。  手始めに30~40代の女性を対象とした「ママさん教室」を金沢で開講し、母親を取 り込むことで子どもへの浸透を狙った。  思惑は当たった。76年、ママさん教室の生徒が連れてきた3歳の女の子が、楽しそう に跳ぶ母親を見て「私もやりたい」と駄々をこねた。この少女が、正式種目となった20 00年のシドニー五輪で6位入賞を果たす古章子選手(現金沢学院大トランポリン部監督 )である。  石川から古、中田大輔両選手が五輪に出場したことで、県内の競技人口は増加。練習環 境や指導体制も整っていった。  全国にとどろいた「王国」の名は、県外から有望選手を引き寄せるようになる。その最 たる例が、ロンドンのメダル有力候補と目される東京出身の伊藤選手である。  現在、伊藤選手が所属する金沢学院大クラブは、高校生と大学生40人のうち、半数を 県外出身者が占める。  地元勢も負けていない。伊藤選手とともにロンドンに挑む岸選手は、古選手のまな弟子 であり、塩野氏から続く王国の系譜を次ぐエースである。  塩野氏は言う。「2人がロンドンで活躍してくれれば、トランポリン熱はもっと高まる 」。パイオニアは、さらなる高みを目指している。 ...[記事全文](this.kiji.isドメインへ遷移)