63キロ級では伊調馨が貫禄の攻めで圧勝し、日本女子では初の3連覇達成に余裕の笑みを浮かべた。その前に行われた48キロ級では、31歳の小原日登美が「最初で最後の五輪」を制して、感激の涙を流した。日本が、女子レスリング界で「王国」と呼ばれるその実力を発揮し、会場には「オバラ」「イチョウ」コールが響き渡って2度も君が代が流れ、さながら「ジャパンデー」と化した。  ▽苦労人の涙  先陣を切った小原は順調に勝ち進んだが、決勝では第1ピリオドを先行される苦しい展開となった。だが、世界選手権で計8回も優勝している実力者らしく、落ち着いて逆転勝ちに結び付けた。専門としていた51キロ級は五輪に採用されておらず、アテネ、北京大会を目指して試みた55キロへの挑戦は国内段階ではね返された。48キロ級への転向も妹の真喜子さんがいるためかなわず、一度は現役を退いた。しかし、その妹の引退に伴ってマットに復帰し、今回、五輪初出場の夢をかなえた。  「五輪は今回限り」と公言していた。万感の思いが込み上げてきたのだろう。「本当に信じられない。私一人の力では金メダルは取れなかった。みんなの力で取った金メダルです」。汗と涙で顔をくしゃくしゃにさせながら、レスリングに打ち込む自分を支えてくれた夫の康司さんや両親など周囲の人々への感謝の言葉を続けた。苦労人の感慨だった。 女子48キロ級で金メダルを獲得、日の丸を背に大泣きする小原日登美=エクセル(共同)  ▽余裕のスマイル  伊調は決勝で相手に1ポイントも与えず、完ぺきな優勝決定。「もうちょっとやりたいことがあったんですが、取りあえず勝ててよかった」と意味深長なコメントで切り出した。「自分自身のレスリングを貫きたかったが、相手によって戦略が変わってしまったのが悔しい」というのがその真意だった。  アテネ、北京大会とお互いに励まし合い、成果を競い合ってきた姉の千春さんが北京後に現役生活を退いた。幼いころからずっと二人三脚でやってきただけに本人の心も揺れた。だが続行を決意し、生活拠点も高校時代から過ごした愛知から東京に変えた。男子の練習にも積極的に参加した。精神的に自立したことで、レスリングに対する考え方が変わった。「自分自身のレスリング」へのこだわりなどその表れだろう。3連覇の感想を問われると「それを目指してやってきたわけではないが、終わってみると達成出来たのはうれしい」と軽く受け流すように言った。  ▽「やっぱ、女でしょ」  開幕前からよく見聞きしたこの予想がいよいよ現実のものとなってきた。日本選手団が獲得した金メダル4個のうち3個は女子選手が奪取している。今後もレスリングの吉田沙保里、サッカーのなでしこジャパンなど有力候補が控えている。  この日、生まれた2人のチャンピオンは、いずれも青森県八戸市にあるレスリング教室で栄光への道をスタートさせている。それが別々の組織だと聞いてさらにびっくり。ともあれ関係者の皆さん、市民の皆さん、本当におめでとうございます。 (47NEWS 岡本彰)