精いっぱい頑張って、サッカー男子の「関塚ジャパン」は引き分けで好発進だと思っていた。もちろん、優勝候補の最右翼といわれるスペインが相手だからである。それが堂々、1-0の勝利。シュート数も2倍にあたる12本を放った。おそらく日本メディアの多くは過去の五輪の歴史になぞらえて「奇跡」の2文字を使うだろうが、日本サッカーのレベルは着実に世界基準へ近づいていると思っていい。この日は「グラスゴーの歓喜」ぐらいの表現でもいいのではないだろうか。    ▽組織力の勝利  スペインの戦力は有力選手をちりばめたスター集団。一方の日本はといえば、国内で行われていた各種の五輪意識調査でも「なでしこ」の陰に隠れ、期待度という点では他競技と比較してもかなりの下位にあった。いわば雑草集団だった。華麗なパス回しで世界中のファンを魅了し、先ごろの欧州選手権を制したメンバーが3人も先発に名を連ねたスペインに対し、日本は11人の集中力で応戦した。試合開始直後から予想通りボールを支配され続けたが、吉田主将を軸にしたDFがマークの徹底を図れば、ワントップの永井ら攻撃陣もピッチを所狭しと駆け回る。そして試合終了まで運動量は落ちなかった。試合後の関塚監督が「本当に選手はよく走ってくれた。日本の組織力から生まれた勝利」とたたえたように、チームは一丸となっていた。  その我慢が結実したのが前半34分、扇原の右CKから生まれた大津の決勝ゴールだった。ニアとは逆サイドに位置取りし、相手守備の意識をそらしてほぼフリーの状態からショートバウンドしたボールを右足で見事に合わせた。「絶対に初戦は勝ちたいという思いが強かった」。大津は前半終了で負傷退場したため、後半はベンチで戦況を見守るしかなかった。「最後まで戦ってくれた選手に感謝したい」。勝利の瞬間、人目をはばかることなく涙した。  ▽絶対に1次リーグ突破を  前半41分、マルティネスがパンツを引っ張り一発退場するきっかけとなったのは、50メートルを5秒台で駆け抜ける抜群の走力を誇る永井の奮起があったから。スペインのミリャ監督が「日本の11番(永井)はとても速かった」とあえて口にしたほどである。「勝ちたかったので一生懸命走った。下馬評では負けると言われていたので、うれしい。絶対に1次リーグを突破できるようにしたい」と胸を張った。まあ、敢えて苦言を呈するならば後半に追加点の好機をことごとく逃していたが、これは必ず次戦以降でリベンジしてもらいたいものだ。  この世代はU-20(20歳以下)のワールドカップ・アジア予選を突破できず、あまり注目されることなく現在に至った経緯がある。いわば世界を知らなかった若人の集団がこの日、まさにGIANT-KILLING(大物食い)を演じたのである。五輪という最上級のひのき舞台から羽ばたく絶好機を自身の手でつかみ取ろうとしている。吉田主将は言う。「もっと自分たちの色を出していけると思う」。格上を撃破した自信は、人間を一段とたくましくするものだ。今大会、「なでしこ」と競い合ってお互いが頂上に一歩でも近づいてくれることを祈らずにはいられない。(47NEWS 浜田潔)