東京五輪まで1年を切った昨年10月末のことだった。スポーツクライミング女子代表の野口啓代(30)が、苦手のスピードの練習で今までにない動きの良さを見せた。この種目のスペシャリストで、現役選手ながら野口を教える池田雄大(22)はこの日を「啓代さん覚醒デー」と呼ぶ。

 スピードは、ホールド(突起物)が設けられた高さ15メートルの壁を登った速さで競う。ホールドの位置は国際基準で決まっていて、無意識に体が動く領域まで達することが求められる。足を踏み外したら-。そんな恐怖心があると、自分で動きを制御してしまう。

 その日は違った。ホールドを迷いなく蹴り上げ、流れるような無...    
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