<評伝>「喉が渇いただろ。さあ、水でも飲みなよ」。笑いながら差し出すコップの中身は、いつも決まって酒だった。「僕も水が飲みたいなあ」と小出義雄さんは、会う度に言った。

 酒飲みが小出さんに抱く世間のイメージだった。だが、実は小出さんは長い間、一滴も酒を飲んでいなかった。正確に言えば、2011年7月からである。サッカーの女子ワールドカップでなでしこジャパンが初優勝したその日、小出さんは「僕も、もう一度世界と戦わなければいけない。だから酒はやめる」と宣言した。当時、古希を迎えていた小出さんは、身体にいささかの不安を抱えていたが、好きな酒を断ってまで前を向くことを選んだ。そんな小...    
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