「プロ野球復帰を目指す」―。プロ野球の阪神や日本ハムのほか、米大リーグのメッツなどで活躍した新庄剛志さんが昨年11月、会員制交流サイト(SNS)にこんな投稿をした。突然の発表は話題になった。2006年のシーズン終了後に引退してから10年以上が経過していることに加え、当時の年齢が47歳だったからだ。

その後、トレーニング風景などをSNSで続々と公開。今年6月には現役復帰の思いを語る本を発売するとともに、出演したラジオ番組で「復帰の夢は継続中」と語るなど、本気のようだ。

新庄氏が、日本野球のトップに位置するプロ野球の球団と契約を果たすのは至難の業だろう。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって閉塞感を感じている多くの人にとって、夢に向かって努力する新庄氏の存在が励みとなっているのは間違いないだろう。

モータースポーツの世界でも、一度引退した選手の現役復帰が話題となっている。それが18年いっぱいでF1を引退したフェルナンド・アロンソだ。

05、06年と2度の年間王者を獲得した実力者は7月8日、21年のドライバー契約をF1ルノーと締結したことが明らかになった。3年ぶりのF1復帰となる。来シーズンには39歳となるアロンソが、どのような走りを見せるのかは非常に興味深い。

一度、現役を離れたドライバーがレギュラードライバーとしてF1に復帰した例はどれくらいあるのだろう。調べると、かなり珍しいことが分かった。

有名なのは、ミハエル・シューマッハーだ。通算91勝、7度の年間王者など数々の最多記録を持つレジェンドは06年いっぱいでフェラーリを離れる。その後、10年にメルセデスで復帰した。

また、通算4度の年間王者に輝いたアラン・プロストは1991年シーズン後に1年間の休養を経て、93年にウィリアムズと契約した。他には、2000年にザウバーで走った後、トヨタと契約したミカ・サロがいる。サロは01年シーズンを通じて、トヨタのテスト走行を行った後、02年にF1デビューしたトヨタとともに最高峰の場に戻ってきた。

ちなみに、3人がF1復帰した時の年齢はシューマッハーが41歳でプロストは38歳。そして、サロが35歳だ。

それぞれの結果はどうだったのだろう。シューマッハーは3年間未勝利で表彰台も1度きり(12年欧州GPの3位)に終わった。シューマッハーは12年シーズンをもって引退したが、最後までかつての輝きを取り戻すことはなかった。サロも6位入賞が最高と苦戦した。

プロストは違った。復帰した93年に7勝を挙げて年間王者を獲得してみせたのだ。だが、そのシーズンをもって引退した。

アロンソは3年のブランクをもって来シーズン、復帰することになる。しかし、幸いにもトヨタと契約して、世界耐久選手権(WEC)というF1と同じトップカテゴリーで戦ってきた。トヨタでは伝統の耐久レース「ルマン24時間」を2年連続で制覇しただけでなく、チームメートの中嶋一貴らとともにシリーズチャンピオンを奪取している。それを考慮すれば、39歳とはいえ、まだまだ入賞以上を争う力はあるはずだ。

新型コロナウイルスに起因する景気後退はモータースポーツ界にも影響を与えている。レース予算の削減も避けられそうにない状況だ。それゆえ、今回の現役復帰発表については、話題優先の契約とする声もある。

しかし、アロンソに名声と実績があるからこそ実現した契約であるのも事実だ。無謀とも言える現役復帰への挑戦を発表した新庄さんともども、その一挙手一投足にワクワクしてしまうのだ。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)