結果は3対1。試合後のスコアだけを目にすれば、勝った側のチームの完勝だったのだろうと予想してしまう。しかし、一試合を通して内容を見てみれば、スコア程に差がない。逆に負けた側が勝っていても何の不思議もないという試合がある。

昨シーズン、J1最終節の直接対決まで優勝を争った両チーム。7月12日に行われたJ1第4節、横浜M対FC東京の一戦は、その時の一戦を思い出させる内容だった。

週に2試合開催する過密日程を考慮したのだろう。両チームともに前節から先発選手が違っていた。横浜Mは湘南戦から先発から7人と大量に入れ替わった。対するFC東京は前節の川崎戦に0―4の大敗を喫したことでメンバー変更は2人だけだったが、今季取り組んできた4―3―3システムを4―4―2にした。負傷の癒えた永井謙佑と橋本拳人の主力2人が戻ったことで、2位に入った昨季フォーメーションへ戻すことができた。そこには、前節のショックを拭い去る狙いもあったと思われる。

キックオフ早々に、試合が動く。開始4分に横浜Mは右ショートコーナーからパスをつなぎ、右サイドに張り出した水沼宏太へ。水沼の間髪入れぬクロスはニアポストに詰めたオナイウ阿道には合わなかったが、オナイウがつぶれたことで逆サイドに抜けた。そのボールにセオリー通り東京DF室谷成の背後から回り込んだ遠藤渓太が、本人いわく右の足裏で「ひょいっ」と合わせて先制点を奪った。

サッカーで最も得点の奪いやすい形。それは、サイドからのクロスに対しニアとファーに攻撃側の選手が詰める方法だ。サイドが起点になる攻撃に対しては、守備側の視線が必ず一方向に持っていかれる。そのDFの視線に入らない背後から回り込めば確実にフリーになれる。遠藤のゴールがまさにこの形だった。

事実、昨季のJ1ではゴールにつながったラストパスが529本あったが、そのうち221本がサイドからのクロス。実に42パーセントを占めている。そのことを考えれば、サイドアタッカーにキックの精度の高い選手を置くことができれば得点力はかなり向上するといえる。

前半は圧倒的に横浜Mのペースだった。後半に攻めあぐねたが、1試合を通じてのポゼッションはFC東京の倍近くの64パーセント。それでも勝ちきるのだから、この試合でのFC東京が披露したチャンスを逃さない鋭い攻めは見事だった。

FC東京のゴールもサイドからの攻めでうまれた。前半17分、ディエゴオリベイラが右に展開したボールを室谷がゴール前にダイレクトでゴール前に。田川亨介が抜け出ようとするところをチアゴマルチンスに倒されPKを獲得。これをディエゴオリベイラが決めて同点に追いついた。

攻め込まれるのも想定内だ。守りながらも一発の反撃を狙うFC東京は、カウンターからチャンスを作る。右サイドを攻め上がった室谷が、自陣から左サイドのディエゴオリベイラにロングパス。ペナルティーエリアを飛び出した横浜MのGK梶川裕嗣が目測を誤り、ディエゴオリベイラをファウルで止めてしまった。一発退場でもおかしくないプレーだった。それでも、左サイドで得たこのFKを田川に代わって投入されたレアンドロが見事な右足シュートで突き刺した。小さなステップから強烈にたたき込み、前半アディショナルタイムの46分に逆転に成功した。

得点に至るまでの効率も良いが、取る時間帯がさらに良い。FC東京の3点目は、後半が始まっておよそ30秒で生まれた。ハーフタイムに気持ちを切り替えて後半に臨んだ横浜Mの選手たちが、このゴールによって出ばなをくじかれたことは間違いないだろう。相手のメンタルに大きなダメージを与えた効果は絶大だった。

シンプル・イズ・ベスト。このような点の取り方こそがサッカーの理想だろう。FC東京はマイボールにしてから、わずか4タッチで得点を奪った。GK林彰洋が前線に送ったパントキック。巧みな駆け引きを見せたのが永井だった。長谷川健太監督をして「謙佑に引っ張ってもらわないとチームの活力が湧いてこない」と言わしめるだけのことはある。

日本代表に名を連ねたこともある横浜MのDF畠中槙之輔を背中でブロックした永井はロビングボールをヒールで前方にコントロール。反転すると、一瞬で畠中を置き去りにした。そして、ダイレクトでファーサイドにピンポイントでクロスを出した。「素晴らしいボールが入ってきた」とレアンドロが感謝するほど見事なラストパス。大外から走り込んだレアンドロは、これをハーフボレーで合わせ勝負を決める3点目を奪った。

横浜Mにもビッグチャンスはあった。後半開始6分に遠藤、34分には仲川輝人がサイドの崩しからフリーでシュートチャンスを迎えた。だが、FC東京の守備は組織を堅く保ち、最後までゴールを許さなかった。

攻められるというよりも、攻めさせる―。そんな守備もある。持ち前の堅守を基盤に見事なカウンターを繰り出したFC東京。どちらが勝ってもおかしくない内容に見えた。しかし、実のところこの勝利は必然だったのかなという思いがしている。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はロシア大会で7大会目。