プロ野球がいよいよ開幕する。当初は3月21日が開幕予定だったから、約3カ月遅れのペナントレースのスタートだ。

新型コロナウイルスの影響で、当面は無観客、試合数も通常の143試合から120試合に短縮された。

他にもベンチ入り人数の増加や外国人選手の登録数などで特例が認められている。

これらが今季の戦いにどう影響を及ぼすのか。過去に例のない変則方式だけに、先読みは難しい。

そんな中で、各チームの監督が春先から腐心してきたのが「2番打者」の問題だろう。

一昔前なら、日本野球における2番打者の位置づけは「器用なバントの名人」がほとんどだった。

先頭打者が出塁すれば、まずバントで送って3、4番の強打者が走者をかえす。

いわゆる高校野球の「甲子園戦法」がプロでも常識化していた。

しかし、近年は米国のメジャーリーグでヤンキースのA・ジャッジ、エンゼルスのM・トラウトら最強打者を2番に起用することで爆発的に攻撃力が上がることが実証された。

こうした流れもあって、日本でも2番打者の役割は大きく変わってきた。

春先のオープン戦、さらに6月からの練習試合を見ると、各チームの監督の目指す2番打者が見えてくる。

▽セ・リーグ 巨人・坂本勇人、横浜・T・オースティン、阪神・近本光司、広島・菊池涼介、中日・平田良介、ヤクルト・山田哲人

▽パ・リーグ 西武・源田壮亮、ソフトバンク・今宮健太、楽天・鈴木大地、ロッテ・角中勝也、日本ハム・大田泰示、オリックス・T―岡田

このあたりが開幕2番の有力候補で、特にセ・リーグでは山田、近本、オースティンの3選手が今季から起用されることが確実視されている。

ヤクルトの山田は日本を代表するスラッガー。過去に3度の3割、30本塁打、30盗塁を記録する大物を、あえて2番に起用して得点力アップを狙うのが高津臣吾新監督の目玉戦略だ。

仮に1番打者が凡退しても、山田が出塁すれば即盗塁で好機を広げられる。

横浜の新外国人オースティンは、いきなり本塁打王候補に挙げられるほどの長距打者だ。

最大のライバルと目されるのが、チームメートで2年連続本塁打王のN・ソトだから、額面通りの働きを見せれば脅威の2、3番が完成する。

2年目の今季から2番に座る阪神の近本は昨季の盗塁王だ。

昨季は159安打を放ち、セ・リーグの新人最多安打記録を更新した逸材で、得点力不足に悩む打線の潤滑油としての役割が期待されている。

昨年、5年ぶりのリーグ優勝を果たした巨人・原辰徳監督の勝負手が2番・坂本の起用だった。

これまでならクリーンアップの主軸と考えられていたチームの顔を、起爆剤として2番に据えると、打率3割1分2厘、40本塁打、94打点の見事な活躍でリーグのMVPに輝いている。

この坂本の成功例が、2番打者の起用法に一石を投じたと見る。

パ・リーグでは上位を狙うオリックス打線の顔ぶれがガラリと変わりそうだ。

その中で、2番にはかつての本塁打王のT―岡田が起用されそうだ。

メジャーの超大物A・ジョーンズを獲得したことで、破壊力十分な打線に生まれ変われば、リーグの台風の目になりそうだ。

楽天も練習試合ではロッテから移籍の鈴木や、昨季33本塁打のJ・ブラッシュまで2番打者としてテストしている。

西武、ソフトバンクの2強に割って入るには、思い切った起用法も必要だろう。

12球団一の強力打線を誇る西武にあって、陰のMVPと評されるのが2番に座る源田の存在だ。

日本一の堅守に加えて、引っ張って良し、流して良し、時にはバントの自在性に加え、塁に出れば俊足が生きる。まさに辻発彦監督が目指す野球の申し子と言える。

例年なら春先は投手優位で、夏場は投手に疲れが出てくるため打者優位とされてきた。

しかし、今季は6月開幕だからそんな定説も当てはまらない。加えて、短期間に120試合を消化するため、連戦が数多く組まれている。

仮に6連戦なら絶対エースの出番は1試合だけとなり、投手陣の層の厚さが問われる。

当然5、6戦目に出て来る先発投手の質が落ちれば、これまで以上に打撃戦が予想される。

超攻撃型の2番打者が、ペナントレースの鍵を握っていると言えるだろう。進化する近代野球の流れは止まらない。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。