「黒毛和牛 毎月プレゼントします」―。

メジャーリーグ、シカゴ・カブスのダルビッシュ有投手が、5月1日からユニークな支援活動をスタートさせた。

新型コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う日本政府の緊急事態宣言を受けて、困窮する飲食店を自腹で支援するとともに外食を我慢している人たちを応援しようというもの。

今やユーチューバ―としても有名な、その情報発信力を生かして1万円の和牛セットを毎月10人にプレゼントする内容だ。

4月には自身のユーチューブチャンネルで得た収益金、約471万円を国立がん研究センターと母子家庭を支援するNPO法人に寄付。さらにリアル版ゲーム「プロ野球スピリッツ」を使って、他選手とのリアルタイム対戦では1勝につき1万円も寄付していくという。

昨年暮れには地元シカゴの放送局が「ユウ・ダルビッシュは、今オフもSNSで絶好調」と報じたほど、その発信力はメジャーリーガーの中でも図抜けている。

昨年来、米球界を揺るがしたアストロズのサイン盗み問題の処分が話題になると「オリンピックならメダルはく奪じゃないの?」とツイートしたかと思えば、メジャー屈指の強打者であるC・イエリッチとの対戦中に、同選手が不審な目の動きをしたことを明かしてネット上で論戦。

日本国内に目を向けると昨年来、高校野球の球数制限や練習法を巡って、大御所の張本勲氏と野球観についてやり合うなど、確かに八面六臂の活躍ぶりである。

米国でもコロナ禍による自宅待機は続き、ようやく7月上旬の開幕が見えて来た。

オープン戦では158キロの快速球と多彩な変化球で好発進。D・ロス監督も「開幕の最有力候補」と公言していただけに、この間のブランクは痛いが、ダルビッシュに焦りは感じられない。

限られた時間の中でトレーニングに励み、家族とのだんらんを楽しみ、そしてツイッターやユーチューブを駆使して思いを伝える。

スポーツニッポン新聞のインタビューにはこう答えている。

「元々、ボーっとしているのが苦手なだけ。今しかできないことってかなりあるはずなので、それを見つけて没頭する。ネガティブなことには振り回されない」

災難を正面から受け止めて、前向きにアクションを起こしていくのがダルビッシュ流だ。

日本ハムから海を渡って9年目。レンジャーズに移籍した2012年には、いきなり16勝(9敗)をマークして鮮烈なデビューを果たした。

しかし、その後は16年に右肘の靱帯再建手術や18年のコンディション不良などが続き輝きを失っていた。

ドジャースからカブスに移籍した昨年も6勝8敗と不本意な数字ながら、後半戦に入ると本来の投球が戻ってきた。

本人が追い求めてきた体の動きと投球のメカニズムがフィットした結果だ。後半戦の13試合だけを見ると防御率は2・76の安定感で、奪三振率13・00はメジャーのエースクラスの数字である。

輝きを取り戻したエースに対して、メジャーリーグ全体から熱い視線が注がれている。

春先からMLBの公式サイトでは「サイヤング賞を狙える有力投手」としてダルビッシュの名が挙がり、「最もえげつないボールを投げる投手」の中にも、ダルビッシュのカットボールが取り上げられている。

既にその評価は30球団のエースたちの中でもトップクラスなのだ。

日本ハム在籍時から社会貢献に尽力してきた。入団直後から生まれ育った大阪・羽曳野市に「ダルビッシュ有子供福祉基金」を作ったり、開発途上国へ水の支援を続け2010年には、こうした活動に対して「ゴールデンスピリット賞」を受賞した。

翌11年の東日本大震災では5000万円、18年の北海道胆振東部地震に際しても日本ハム球団を通じて1000万円の義援金を送っている。

かつての「やんちゃ坊主」は、今や投手として円熟期を迎え、さまざまな情報を発信しながら球界を引っ張る存在となった。

コロナの影響でメジャーの試合数も例年の半分近くの82試合程度と言われている。開催地もポストシーズンまでは東、中、西の3地区だけの戦いに限定して極力移動のリスクを減らす方向だ。

ダルビッシュの所属するカブスは、ナ・リーグ中地区で秋山翔吾外野手が加入したレッズとの対決が実現することになる。

しかし、再びコロナの感染が広がればすべての構想は崩れ去る。とはいえ、せっかく最強投手の称号を得るチャンスが訪れた今季は、ダルビッシュの完全復活を見届けたい。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。