今季からメジャーリーグ(MLB)に挑戦している筒香嘉智(レイズ)と秋山翔吾(レッズ)がオープン戦で素晴らしい働きを見せている。

まず筒香。2月23日にフロリダで行われたヤンキース戦に5番・左翼で出場すると、第1打席で投手強襲の中前打。第2打席でも四球を選んで「出塁率10割」の上々デビュー。2日後に行われたレッドソックス戦では左投手を苦にせず左中間へ運ぶ“メジャー1号"放った。

秋山も負けていない。こちらも23日にアリゾナで行われたホワイトソックス戦に1番・中堅で登場すると初球を中前打。

26日のエンゼルス戦はあの大谷翔平との対決に注目が集まったが、無安打の大谷の前で第2打席には投手強襲安打を記録した。

筒香、秋山はともにオープン戦の初戦から2試合連続安打を記録した。これは過去の日本人野手ではイチロー(マリナーズ)と松井秀喜(ヤンキース)の両選手以来となる。

近年、MLBに挑戦した野手は多いが成功したと言えるのはこのレジェンド二人だけだろう。それだけにオープン戦序盤とはいえ、楽しみと夢が広がる滑り出しだ。

日本でも一流の評価を得ていた両選手だが、こちらを感心させるのは、単にヒットを打ったという結果ではなく、違う取り組みに腐心している点にある。

筒香は初戦の中前打よりも四球を選べた第2打席での収穫を語っている。

カウント2―2から、変化球や156キロを計測した速球をファウルでしのぎ、8球目に四球を選んだ。

「ツーストライク後のファウルを打つには技術を使う部分がある。それができたことはよかった」と対策の一端を明かす。

米球界と日本球界の投手を比較すると、MLBは圧倒的なスピードボールと打者の手元で変化するカットボール系が主流だ。

これを克服するには、手元までボールを引きつけて見極め、難しいボールをファウルでしのぎながら甘い球を仕留めることが肝心だ。高度な技術の詰まった四球に筒香の覚悟が見て取れる。

秋山の場合は「失敗」を教訓にしている。2戦目の第1打席は見逃しの三振。日本であれば、明らかな高めのボールをストライクと判定されて、最後も外角に外れているように見えるが球審のジャッジはストライクだった。

MLB挑戦1年目のオープン戦、並みの打者なら結果を求めて早いカウントから打ちにいく場面で平然と見送るあたりに「和製安打製造機」の自信を見た。

「ああいうこともあるんだと思うしかない。打てないボールには手を出さない」と平然と語る。

新顔に対して審判が厳しい判定をするのは珍しくない。MLB特有の通過儀礼でもある。そうした傾向も肌身で感じながら次なる対策を考えるのが秋山流である。

ともに早くからMLBへの挑戦を意識してきた。

2015年のオフにドミニカ共和国でのウインターリーグに参加した筒香は、MLBを目指す若手のハングリー精神に触れ、手元で動くボールへの対策に着手している。

手元までボールを引きつけて逆方向に強い打球を飛ばす。それがレッドソックスとのオープン戦の左越え本塁打につながっている。

秋山も早くから「イチローさんや松井さんの世界を味わってみたい」と、MLBを視野に入れている。

18年オフの西武との契約交渉では、複数年契約を希望する球団に対して単年契約を選択。15年にはプロ野球新記録となるシーズン最多の216安打をマークした男は満を持して海を渡った。

近年のMLBではハイテク機器を駆使したデータ野球が主流だ。

個人の打球方向を調べ上げて、極端な守備シフトを敷くのは当たり前。しかし、筒香も秋山も右、中、左と広角に打ち分ける技術を持っているだけに心強い。

筒香は外野以外に三塁や一塁の守備に就くケースが増えそうだ。秋山も慣れ親しむ中堅から左翼に回る場合がある。

不慣れな守備に、MLB独特の流儀、言葉によるコミュニケーションなど克服すべき課題は多い。

だが、MLBの入り口に立ちながら、既に次の課題に目を向けられる選手は少ない。

今季の日本人メジャーリーガーはこの二人以外にも山口俊がブルージェイズに入団、ドジャースの前田健太はツインズに移籍した。

もちろんエンゼルスの大谷、ヤンキースの田中将大、カブスのダルビッシュ有らの活躍も楽しみだ。

もっとも、報道する立場から見れば、昨年までは田中のいるニューヨークと大谷のいるロサンゼルスを拠点にすればよかったが、今季は北は山口が在籍するカナダのトロントから、南は筒香のいるフロリダまで北米大陸を何往復することになるのか。

各社とも特別通信員の人材確保に大わらわだという。苦労に見合った活躍を期待したいものだ。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。