サッカー日本代表主将の吉田麻也(サウサンプトン)が、世界最高峰と呼ばれるイングランド・プレミアリーグでプレーするようになって8シーズン目。31歳とベテランの域に入ったDFにとって、トップレベルのコンディション維持は欠かせない。

昨年4月からは個人トレーナーの木谷将志さんが英国に拠点を置くようになり、本格的に二人三脚でそれぞれの挑戦を続けている。

二人の出会いは、2013年に行われた元日本代表の藤田俊哉さんの引退試合。

当時、股関節痛を抱えていた吉田は、知人に紹介された木谷さんのマッサージを受けたところ「アスリートは一回体を触ってもらえれば、できる人かどうかが分かる。それまでずっと腸腰筋をほぐしていたが、背中など違うところにアプローチしてもらって劇的に良くなった」と、すぐに効果を実感。それから定期的に日本から英国に呼び寄せるようになった。

一方、木谷さんは数カ月に1回のペースで英国に渡り、吉田の紹介でサウサンプトンのチームメートも施術するようになった。

元ポルトガル代表のDFフォンテ(現リール)から始まり、口コミで評判が広まってオランダ代表のDFファンダイク(現リバプール)もマッサージした。

契約選手が次々と加わり「クライアントが増えて日本から行ったり来たりするのが大変になり、それなら英国ビザ(労働許可証)を取って、こっちで仕事をする方がいい。まだ日本人で誰もやったことがないのでチャレンジしてみようと思った」と、妻子を連れて英国に移住する決断を下した。

施術方法は、足で体を踏むという独特のスタイルで「けがをしない、コンディションを上げる、パフォーマンスを上げるということにつながる治療」と説明する。

マッサージするタイミングは「試合前日にやって(筋肉が)緩みすぎると体が動かないので、前日はほぼ触らない。吉田選手の場合、試合後はその日のうちにやる。翌日の回復が全然違うので、アウェーから帰ってくるのが深夜であっても必ずやる」と決めている。

欧州でプレーする日本代表選手から依頼があれば出張することもあり、今では吉田と定位置を争うポーランド代表のDFベドナレク、デンマーク代表のDFベステゴーを含め、8人と契約を結んで多忙な日々を送る。

プレミアリーグの選手をサポートしながら、昨年11月にはロンドンにある日本人治療院「ナチュラル・クリニック」の共同経営権を取得した。

将来的な構想にあるのは、海外で自身に続くトレーナーを目指す日本人のための受け皿になることだ。

治療院でスタッフとして働きながら、アスリートのトレーナーも務めるという“二足のわらじ"を履くことも可能になり「日本人の繊細さは絶対に勝てるポイント。こっちの人に絶対できない治療を日本人ならできる。米国に行きたいというトレーナーは多いが、欧州にチャレンジするという道も広めていきたい」と力説する。

21歳で海外移籍し、欧州でのキャリアが11年目に突入した吉田も賛同する。「僕が最初にVVVフェンロ(オランダ)でチャレンジをさせてもらったみたいに、そういうきっかけや礎になる場を提供できると思う。そこからたくさんトレーナーを派遣して日本人選手や駐在員をサポートできれば日本全体をサポートできるし、日本サッカーにとってもプラスになる」と語り、挑戦を後押ししている。

それでも木谷さんにとっては今季途中から出場機会が激減し、苦境に陥る吉田のサポートが最優先となる。

プレミアリーグ通算154試合出場(2020年1月現在)は日本人で史上最多。サウサンプトンとの契約は今季限りで去就は不透明だが、木谷さんは「今からが僕みたいな人間が必要になってくる年齢。1試合でも、1分でも長くプレーし、今後もう誰にも破られない記録を一緒につくりたい」と、まだまだ第一線でともに戦い続ける覚悟を口にした。

田丸 英生(たまる・ひでお)プロフィル

2004年に共同通信入社。名古屋、大阪、本社の運動部を経て、2017年12月からロンドン支局で欧州サッカーを中心にスポーツ全般を取材。東京都出身。