新しい年になった。東京五輪が開催される2020年は、日本のサッカー界にとっても大切な年となる。自国でビッグトーナメントが行われるのは02年のワールドカップ(W杯)日韓大会以来となる。

アジア初となるW杯日韓大会で、日本サッカー界は大きく変わった。W杯は出場するだけでは意味がないということに気づいたのだ。背景には、史上初のベスト16進出という成果を出しつつも8強以上に進める可能性が十分にあったのに逃してしまったという悔しさも味わったことにある。

世界で戦って成果を得る―。現在では当たり前となった、この風潮は02年直後に定着したといえる。

そして、今年。18年ぶりに選手たちが国民の熱気を直に受け止める大会が再び巡ってきた。日本サッカー界が、新たな基準を設定する機会になれば良いと思う。刺激を受け、高い目標を掲げ続けさえすれば日本サッカーの進歩は止まることはないだろう。

年明け早々、残念なことがあった。新しい国立競技場が観戦にはまったく適さないことに気づいてしまったのだ。元日に開かれた天皇杯の決勝で初めて足を踏み入れたが、2階と3階の席はまだしも、1階の席はピッチに対しての角度がなさ過ぎるために、見づらいことこの上ない。

気の毒なのは、高倍率をくぐり抜けて五輪の開会式や閉会式のチケットを手に入れた人だ。1階席はグラウンドから近いということもあり値段も張るのだろう。だが、趣向を凝らすであろう演出を十分に楽しむことは難しそうだ。日本のスタジアム設計に関わる人たちはなぜ、チケットを買って観戦する人を無視するのだろうか。

6月から7月には欧州選手権が、9月には22年W杯カタール大会のアジア最終予選も始まる。でも、やはり気になるのは東京五輪だ。昨年のW杯で悔しい負け方をした女子の「なでしこジャパン」は上積みがあるだろうから、素直に期待してもいい。一方、気になるのは男子だ。

「史上最強の五輪代表」

テレビを始めとするメディアは男子代表を、こう持ち上げる。ただ、それがどのチームを指すのか実のところ分からない。これまで東京五輪世代の選手は、70人以上が招集されている。昨年6月、その選手たちは二つのチームに分けられた。トゥーロン国際大会に出場したチームと、フル代表として南米選手権に出場したチームだ。さらに10月に編成されたチームは、敵地でブラジルを3―2で下すという快挙をやってのけた。

経験は着実に、確実に積んでいる。だが、チームの顔触れはいつも違う。森保一監督が初めて「現時点でのベストメンバー」と公言したのは昨年11月17日のコロンビア戦だけだ。その試合で日本は、0―2というスコア以上の完敗を喫した。

東京五輪の出場資格を持つ選手は、確かに豪華なメンバーがそろっている。冨安健洋(ボローニャ)、堂安律(PSV)は、森保ジャパンの立ち上げからフル代表でのレギュラーとして活躍してきた。加えて、クラブで主力として活躍する久保建英(マジョルカ)を筆頭に、板倉滉(フローニンゲン)、中山雄太(ズウォレ)、三好康児(アントワープ)、前田大然(マリティモ)と欧州で出場機会を得ている選手たちが過去にないほどいる。

「個」の力。国際大会のたびに、日本に欠けていると指摘されてきたものが現チームはある。逆に、失ったものもある。チームとしての結束力や組織力だ。これまで日本代表を支えてきた大切なベースは現時点では確立できていない。さらに言えば、約半年後と迫っているのに、誰一人として東京五輪のピッチに立つチームのメンバーを想像できない。9日から始まるU―23(23歳以下)アジア選手権にしても、海外から招集されたのは食野亮太郎(ハーツ)ただ一人。国際サッカー連盟(FIFA)の公式大会と違って、五輪には選手を招集するための拘束力がないためだ。

素晴らしく良い“食材"は目の前にある。ところが、シェフがまだ何の料理を作るのかが見えてこない。森保監督が採用するのは3バックなのか、4バックなのか。それが固まらない限り、招集する選手も決まらない。

五輪の登録メンバーは18人。ちなみに、W杯は23人だ。このうちGKが2人を占めると、残りは16人。さらにオーバーエイジ枠の3人を使えば、U―23年代の選手に残された椅子は13しかない。決勝に進出したと想定すると、17日間で6試合を戦うことになる。厳しい日程の中で選手に求められるのは、複数のポジションをこなすことだ。

「金メダルを狙う」。森保監督のこの宣言は決して夢物語ではない。W杯と違い今回の五輪は十分に可能性がある。スペインやドイツなど4カ国が参加するヨーロッパ勢は、欧州選手権を優先させるだろう。怖いのは出場国がこれから決まる南米勢だが、彼らは真冬の南半球から来る。日本の酷暑は、海外選手には酷だろう。「ひきょうな」アドバンテージではあるが、使える条件はすべて使う。優勝の可能性は十分にあるのだ。

競争は必要だ。それでも、ある程度のチームの骨格が見えなければ、選手自身が不安に違いない。だからこそ、森保監督は早急にメンバー固めに入ってもらいたい。

半年なんてあっという間だ。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で7大会目。