地方大会の開幕からちょうど2カ月。第101回全国高校野球選手権大会は8月22日に履正社(大阪)の初優勝で幕を閉じた。

タレントぞろいの大阪桐蔭や、吉田輝星投手を中心に“旋風"を巻き起こした金足農(秋田)がいた昨年の第100回大会と比べれば注目度はやや劣っていたかもしれないが、今年も一球に懸ける高校生による熱戦が繰り広げられた。

さて、私が高校野球キャップに就いた昨年12月以降だけでも、高校野球界を取り巻く環境は大きく変化している。

新潟県高野連の球数制限導入表明(後に見送り)をきっかけに、日本高野連は「投手の障害予防に関する有識者会議」を発足。これまでに開かれた2度の会合では、全国大会で一定の日数の中で投げられる球数を制限することを答申に盛り込むことを決めた。

夏の甲子園大会では休養日が1日増やされ、昨年に続いて試合中の給水時間なども実施された。厳しい環境下でプレーする球児を守る動きは、着実に進んでいるといえる。

その変化を大きく取り上げ、時には紙面等で提言なども行う報道各社だが、現場ではマスコミ側の“矛盾"を感じることが多い。今夏の甲子園大会を例に挙げてみる。

開幕前に代表49校のよる甲子園練習が3日間行われた。20分間の練習を終えた監督、選手たちはバックネット裏のスタンド席に移動し、次の学校が練習をしている間に取材を受ける。

これが流れ作業的に繰り返される。問題だと感じたのは、初日の取材は直射日光が当たる日なたの席で実施されたことだ。

2日目からは日陰の席に変更されたが、これだけ熱中症対策などをクローズアップしているマスコミが、そういう状況を見過ごしたことはいかがなものだっただろうか。

各試合の1時間半から2時間前には、両校10分ずつの「試合前取材」がある。

ここでは室内練習場に整列した背番号1から18までの選手や監督、部長に試合への意気込みなどを聞く。中には全く取材されずに10分間立ったままの選手もいるし、甲子園大会を経験してプロに進んだある投手は「球場入りした後に取材の時間があり、集中がそこで一度切れてしまった」と振り返っている。

感じ方には当然個人差はあるが、職業としてプレーするプロ野球選手ならともかく、高校の一部活動の大会でこの時間は本当に必要だろうか。

試合が終わると、選手はインタビュールームに入り、荷物を置くとほぼ同時に取材が始まる。スパイクを履き替えたり、水分を取ったりする間もないほど矢継ぎ早に質問する記者もいる。

約20分間の取材が終わると、ようやくクールダウンの時間に入る。

マスコミ側の事情で言うと、次の試合が始まってしまうので、あまり取材までの時間が空いてしまうのは都合が良くないが「選手ファースト」ではないのは事実だ。

決勝の試合前取材では、星稜(石川)の奥川恭伸投手の取材目当てに報道陣が殺到。場所取りでの押し合いを見かねた日本高野連関係者が「選手がけがをしたらどうするんだ」と怒鳴る場面もあった。

この試合後には、まだクールダウンのキャッチボール中の奥川投手に話しかけるマスコミ関係者がいるなど、真摯な姿勢で取材に応じてくれるアマチュア選手に対し、取材する側の大人が秩序を守れていないと感じることが多々ある。

取材機会、時間があればあるほど取材する側としては助かるし、より内容の濃い話が聞けるだろう。

しかし相手が高校生だからといってその環境に甘えすぎず、選手らへの負担になっていないか“大人の事情"が影響しすぎていないかを逐一検証し、時には少々の不利益になったとしても受け入れていく必要があるのではないか。

他者の改革を報じるばかりではなく、マスコミ側も変わっていかなければいけないことがたくさんあると思う。

伊藤 彰彦(いとう・あきひこ)プロフィル

2012年共同通信入社。大阪社会部での警察担当を経て、13年末に福岡運動部へ異動。16年12月に大阪運動部に移り、2年間プロ野球を担当し、18年12月からは高校野球キャップを務める。神奈川県出身。