東京五輪本番から1年を前に、初めて国際総合大会の雰囲気や開催国の熱気を体感した。

周囲からうらやましがられた、学生スポーツの祭典夏季ユニバーシアード取材でのイタリア・ナポリ出張は中身の濃い貴重な経験の連続だった。

まず、運営面に対しては驚きが多かった。ブラジリアが財政難で開催を返上して決まった代替都市ということもあり、準備は決して十分とは言えない。

各競技会場まで運行されるはずのメディアバスは、スケジュール通りに一切動かず、こちらからお願いしたところで手配を始めるような状態。ようやく乗れたバスにたらい回しにされることもあれば、選手までもが時間通りに移動できず、乗っているバスから煙が出て途中で降ろされるアクシデントもあったという。

過去の大会に選手として出場していたヨーロッパの関係者が「アジアの大会では考えられないことだらけ」とうんざりするほど。日々競技の進み具合を見ながら、メダルが出そうな場所へ取材日程を考える私たちにとっても、移動面での心配は尽きず、課題は山積みだったように感じた。

ただ、開催国としての熱量にはすごみを感じた。

大会12日間のうち、競泳の取材に行くことが多かったが、会場は日々イタリア選手の登場に大盛り上がり。場内の音楽も決勝になれば大音量で観衆の声援を後押しし、レースの合間に取材で使ったレコーダーを聞き直そうとしても全く聞こえないほど、熱気に包まれていた。

メディアシートでの他国の記者の立ち居振る舞いも印象的だった。

日本では感情を表に出す人はあまりいないと認識しているが、今年から海外に出張する機会が増え、1プレー1プレーに一喜一憂するところを何度も目撃した。

今大会も国を挙げての総合大会ということもあり、純粋に一国民として記者席から身を乗り出して応援している姿には考えさせられるものもあった。

1年後の東京五輪に場所を置き換えて考えてみても、観衆の声援はきっと同じぐらいかそれ以上が飛び交うことが予想される。

リオデジャネイロ五輪にも出場した競泳女子の今井月(コカ・コーラ)にとっても「盛り上がっていると自分の気持ちもすごく上がってくる。それが東京でっていう状況を考えるとやっぱり出たい」とモチベーションを高める一因となっている。

ただ、今大会の競泳陣のまとめ役だった横山貴ヘッドコーチは「もちろん力になる可能性もあれば、選手によってはプレッシャーになる可能性もあって、両方の状況が考えられる」と懸念もする。

とりわけ国別のリレーの決勝の雰囲気になるとまた異様で、横山コーチも思わず動画に収めて、日本に持ち帰って検討材料にするほどだった。

五輪ではなくても、街中の人たちからの注目度も高かった。

タクシーやレストランでも、ユニバーシアードの取材パスを見れば「どこの取材に行ったんだ? イタリアの選手はどうだった?」と何度も尋ねられ、うれしそうに話を聞いてくれた。

イタリアという国民性があったからこその部分もあるかもしれないが、東京での盛り上がり具合を想像すると、楽しみでならない。

出場する日本選手の誰もが味わったことがない、56年ぶりの自国開催までいよいよ残すところ1年。昨年まで野球担当が長かった自分自身にとっても、開会式から閉会式に至るまでの総合大会の取材の流れ、雰囲気を事前に味わえたことは大きかった。

山本 駿(やまもと・しゅん)プロフィル

2011年共同通信入社。和歌山支局での警察担当を経て、13年に大阪運動部へ異動し、プロ野球阪神などを担当。17年から広島支局で2年間広島カープを取材し、18年12月から本社運動部でレスリング、バドミントンなどをカバーしている。岐阜市出身。