東京五輪・パラリンピックで開催されるアーチェリーのテスト大会が7月12日から18日まで、東京都江東区の夢の島公園アーチェリー場で開催された。

競技特性上、五輪とパラリンピックで差が少ないため、健常者の選手の中にパラ選手が招待され、同一のカテゴリーで実施された。

日本からは6月の世界選手権(オランダ)に出場した男女6選手と、既に東京パラリンピック代表に決まっている車いすの2選手が出場。個人戦では、17歳の園田稚(東京・足立新田高)が女子の16強に進んだのが最高成績と厳しい戦いを強いられた。

この大会でとても残念だったことがある。1週間の大会を無観客で開催したことだ。

国際大会やワールドカップ(W杯)を兼ねているテスト大会は観客を入れて大会本番の雰囲気を醸し出しているが、アーチェリーは東京五輪・パラリンピック組織委員会が主催した大会のため、関係者しか入場できなかったのだ。

世界のトップ選手が参加したことに加え、パラリンピック選手と五輪選手が同じフィールドに立つという共生社会の象徴ともいえるようなイベントは、さみしい雰囲気の中、ひっそりと行われた。

男子個人の決勝トーナメント1回戦では車いすの上山友裕選手(三菱電機)と、五輪競技の世界ランキング1位ブレイディ・エリソン選手(米国)が対戦。上山選手は「アーチェリーの世界でトップに君臨するような選手と一緒にここでやれた。非常に大きな経験になる」と振り返った。

しかし、このような戦いを見守ったのは東京都や組織委の関係者、メディアなど限られた人間のみ。絶好のPRの機会を逃し、非常にもったいない気がした。

決勝会場は5600人分の観客席が設置される予定だが、上山選手は「今の僕の力では100人くらいしか集められないかな…」と苦笑いした。

折しも、東京五輪観戦チケットの1次抽選販売の結果が出て間もないタイミングだった。抽選で外れた数多くの人に、本番会場でテスト大会を観戦してもらおうという発想はなかったのだろうか。五輪だけでなく、パラリンピックを広く知ってもらうという思いに至らなかったのだろうか。

天気には恵まれなかったが、大会期間中は3連休もあり、スケジュールもよかった。

同じマイナー競技の近代五種のテスト大会はW杯ファイナルを兼ねる大会で、無料で観客を入れ、立ち見が出るほどの盛況だった。

「競技および運営のテストを行っている関係上、チケットは販売しない」というしゃくし定規の規定が何より残念だった。

組織委は無観客で行った理由について「仮設の決勝会場はテスト大会終了後に取り壊す必要があり、観客席まで建てることが困難だった」「経費もかかり、コンパクトな大会という理念から反する」と説明するが、お金を払ってでもテスト大会を見たいという人から、入場料収入も見込めたはずで、テスト大会のためのスポンサーも存在することを考えると、いくらでもやり方はあったように思える。

五輪に過去4大会出場している国内の第一人者の古川高晴選手(近大職)は「正直、組織委の人に申し訳ないが、ここの観客席がない限りは普段と一緒なんです。観客席ができて、お客さんも呼んでプレ大会やるというなら、本番に向けた練習というか、イメージづくりもできると思うが、それが全くできなかった」と選手の立場から苦言を呈した。

大会本番まで残り1年である。今回は特にマイナースポーツ、パラスポーツが注目を集める機会となり得た。

組織委、国、東京都の幹部はパラリンピックに関するイベントの席上で「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功はない」と判で押したようなフレーズで機運醸成をうたっている。

しかし、言葉だけが先行して、行動が伴っているように見えないのが残念だ。

三木 智隆(みき・ともたか)プロフィル

7年間のスポーツ紙勤務を経て2009年に共同通信入社。ゴルフ、陸上などを担当し、ロンドン五輪、ソチ・パラリンピックを取材。14年に大阪運動部に異動し高校野球、17年に東京本社に戻り、パラリンピック、サッカーなどをカバーしている。奈良県出身。