激戦から1カ月がたち、世界遺産ブダペストの街で行われた大会を振り返ってみたい。

4月下旬に行われた卓球の世界選手権個人戦で、日本勢はシングルスでメダルなしと悔しい結果に終わった。

表彰台を期待された張本智和(木下グループ)は、前回達成した8強に届かず、ベスト16の4回戦敗退。試合直後、コート脇で深くうなだれる姿が印象的だった。

敗戦から数日後、「これまでは東京五輪(の結果次第)で自分の卓球人生が終わるんじゃないかと思うくらい自分にプレッシャーをかけすぎていた。今回負けたことで、その考えがなくなった。もっとリラックスしてこれからの大会に臨みたい」と語ってくれた言葉を聞いてハッとした。

トップアスリートの張本は、授業や部活に明け暮れる普通の10代とは全く異なる舞台で戦っているんだと、あらためて実感させられた。

準決勝まで強豪の中国勢と当たらない位置に入った今大会が、日本男子40年ぶりのメダル獲得に向けたチャンスだったことは事実だ。一方で、それらの期待や好条件がプレッシャーとなっていたことも間違いない。

大会直前の右手薬指の故障の影響で練習量に不安もあり、敗戦直後は「特別緊張した」と漏らした。

緊張や重圧とどう向き合うかは、スポーツ選手の永遠のテーマの一つだ。

他競技になるが、現地取材した2015年のラグビーのワールドカップ(W杯)イングランド大会のことを思い出した。

強豪南アフリカ代表を破るなど大躍進した日本代表には、プレースキッカーを務めた五郎丸歩(ヤマハ発動機)が「影の立役者」と感謝したスポーツ心理学の専門家、荒木香織メンタルコーチがいた。

世界王者ニュージーランド代表「オールブラックス」でさえも緊張するんだから「緊張して当たり前」だと実際の事例を挙げて語っていたことが、強く記憶に残っている。

卓球はオフシーズンがないと言われるスポーツで、カレンダーは国内外の主要大会で埋まっている。

1年を通して心身の緊張にさらされている点も見逃せない。取材を受ければ、「目標は金メダル」と言わせられるような質問を何度も受けるのもトップ選手の宿命だ。

自分が同じ立場だったらどうだろうか。だからこそ、自戒を込めて聞いてみた。「15歳の張本智和に、無意識に期待をかけすぎているのだろうか」と。

「今大会は少しプレッシャーが多かったかもしれないけど、羽生(結弦)選手や内村(航平)選手は、期待がかかる中で五輪の金メダルを取っている。そういう選手になりたいなと思う」。肝っ玉の据わった言葉が返ってきて安心した。

6月で16歳。張本は敗戦を糧にさらにたくましく、強くなる。そう思った途端、次こそはとまた期待値を上げてしまった。

「東京五輪の目標は?」。私は彼に、あと何度同じ質問をするのだろう。

小海 雅史(こかい・まさし)プロフィル

2005年共同通信入社。06年から福岡運動部でプロ野球ソフトバンク、11年から本社運動部でヤクルト、巨人を担当した。15年からは卓球やラグビーなどを取材し、15年ラグビーW杯、16年リオ五輪をカバー。東京都出身。