プロ野球やサッカーのJリーグなどといったアスリート系スポーツのチームはレギュラーシーズンが始まる前に「キャンプ」と呼ばれる合宿を行うことで、シーズンに向けた準備を進めていく。

例として、プロ野球・巨人の1軍の日程を紹介する。2月1日から28日までを沖縄でキャンプを実施。キャンプ終盤の23日から3月24日までは他チームとのオープン戦で調子を整えて、3月29日に開幕するレギュラーシーズンを迎える。つまり、およそ2カ月間掛けてみっちりとチームを仕上げていくわけだ。

F1において、このキャンプに当たるのが「シーズン前テスト」だ。今季は第1弾が18日から21日まで、第2弾が26日から3月1日までの計8日間行われる。これを短いと見るか、長いと見るかは判断が難しい。というのも、「天文学的」と言って良いほど多大な費用が掛かるF1では、わずか1日のテストをするにもトップチームでは軽く1億円を軽く金額が必要だという。そこに投入するマシンや新パーツ類が必要なのは言うまでもなくテストを行うサーキットまでそれらを輸送しなければならない。加えて、テストを円滑に進めるためには数多くのスタッフが欠かせないのだ。このように、増大し続けるチーム予算を抑えるためにテスト日数は制限され、現在では前述のように合計8日間となっている。

この限られた日数でどれだけ多くのデータを集めることができるかが、開幕戦オースラリアGP(3月17日決勝)から始まる今シーズンの成績に直結すると言っても過言ではない。当然のことながら、空力を始めとするパーツなどを多く投入できる方がデータは収集できる。その点において、ホンダはF1に復帰した2015年シーズン以降、圧倒的に不利な状況で戦わざるを得ない状況に置かれてきた。現在のアスリートスポーツでもデータ量を増やし、分析力を高めることはチームの強化にとって重要な要素だ。モータースポーツではこのことがより強く求められる。長らく1チームだけの供給という体制だったホンダが、複数チームに供給しているライバルたちをキャッチアップできないまま終わってきたのは必然だったと言えるのだ。

この状況が昨シーズン、大きく変わった。トロロッソとの契約に加えて、トップチームの一つであるレッドブルともエンジン契約を結んだからだ。これにより、今年から2チーム分のデータが得られるようになった。単純計算でもデータ量が倍増することになる。

そして、その効果はシーズン前テストで早くも現れているようだ。昨年、ホンダのエンジンがテスト初日に走行した周回数は93周、それに対してライバルのエンジンはルノーが255周、フェラーリが198周、メルセデスが178周だった。今年のテスト初日はそれが一変。ホンダが205周、ルノーが228周、フェラーリが348周、メルセデスが180周と、ほぼ互角になった。ホンダ関係者も「テストは順調で、有益なデータを多く蓄積することができている」と確かな手応えを口にしている。

少数精鋭―。この言葉に美徳を感じる読者は少なくないだろう。だが、F1においては「量の多さ」はとても重要な要素だ。「郷に入っては郷に従え」。復帰5年目にして同じ土俵に立ったホンダの戦いに今年は注目だ。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)