プロ野球はキャンプ花盛りだ。FAで広島から巨人に移籍した丸佳浩や、中日・根尾昂、ロッテ・藤原恭大に日本ハムの吉田輝星らの高卒ルーキーが注目を浴びる中で、これぞ職人と呼べる西武の源田壮亮選手に迫ってみる。

今から3年前のドラフト。各球団は即戦力遊撃手の争奪戦の様相を呈した。巨人の吉川尚輝と中日の京田陽太である。

吉川はドラフト1位、京田は同2位で入団したが、その年の3位で源田は西武の指名を受ける。

社会人のトヨタ自動車出身、堅実な守備に定評はあったが、打力は非力で各球団の評価は大学出身の二人に軍配を上げていた。

ところが、いざプロの戦いが始まると源田の働きが際立っていった。

現役時代は守備の職人だった辻発彦監督の就任も大きい。

それまでの西武は、松井稼頭央や中島宏之ら優秀なショートが抜けてウイークポイントの一つになっていたが、新指揮官は実戦的で堅実な守備と俊足に源田の可能性を見出す。

思い切って開幕から遊撃のレギュラーに抜擢すると、想像以上の働きで新人王まで獲得。課題とされた打撃でも2割7分の数字はショートとしては合格点以上だ。

かつて同じトヨタ自動車出身でヤクルトに入団した古田敦也捕手も、社会人時代はめがねを使用していることと、打撃の弱さが指摘されたが、プロ入り後は球界を代表する名選手に成長して首位打者のタイトルも獲得している。

ちょっとしたきっかけで変身する選手もいるのがこの業界、だからスカウトの眼力も問われる。

2年目のジンクスも源田には無関係だった。気がつけば、球界の新たな「記録男」の称号までついてくる。

新人から2年連続のフルイニング出場は、あの長嶋茂雄さんを抜く球界記録。さらに昨季は526個の捕殺を果たし、こちらも遊撃手のプロ野球記録を樹立している。

辻野球の申し子は、チームの10年ぶりのリーグ優勝になくてはならない存在となった。

昨年オフ、某テレビ局の企画で現役選手100人が選ぶ「守備のナンバーワン」部門で源田が選出された。

過去4年は広島の菊池涼介が連続で選ばれているのに、その菊池さえ抑えたのだから、いかに源田の守備に対する評価が高いかが分かる。

菊池が大向こうをうならせるような派手さを兼ね備えた名手に対して、源田は好対照かもしれない。

かつて、名遊撃手としてゴールデングラブ賞の常連だったのがヤクルトの宮本慎也氏(現ヤクルト1軍ヘッドコーチ)。彼はファインプレーをそうは見せない職人だった。

「派手に飛びついてアウトにするだけがファインプレーじゃない。事前に打球方向や投手の出来まで考えながら守備位置も変える。それが一流選手でしょう」

源田も宮本氏と同じタイプ。ともかく打球への第一歩が素早い。投手の球種や打球方向に対する準備ができているから難しいゴロでも難なくさばいて見せる。

しかも、毎年30盗塁以上をマークする俊足を生かして守備範囲が広い。さらに強肩でスローイングが速くて正確なのだから、名手の条件はすべて兼ね備えている。

今季から大リーグのマリナーズに移籍した菊池雄星投手も「源ちゃんのところに行けば間違いなくアウト」と、全幅の信頼を寄せていたものだ。

遊撃というポジションは言うまでもなく守備の要である。最も一塁から遠い位置で守るのだからミスは許されない。

外野との連携も含め1試合の労働量は多い。しかも打者として塁に出れば走り回るのが役目だから、常に故障のリスクを背負う。

そんな激務を2年間皆勤の上、走攻守に隙のないプレーを続けているのが源田という男のすごみである。

もはや、プロ3年目で名人の域に達しているとは言い過ぎだろうか。

今季は昨年まで二遊間のコンビを組んでいた浅村栄斗がFAで楽天に移籍、内野の顔ぶれを見ても源田にはリーダーの役割が期待される。

打撃の方でも浅村の抜けた穴を埋めるためには、さらなる向上が求められている。

このオフから新たな挑戦を始めた。これまで一桁の本塁打で終わっていたが、パワーをつけて飛距離アップに取り組んでいるのだ。

守備良し、走って良しの万能選手に打撃の破壊力まで加わったら、果たして―。ファンならずとも大注目の26歳である。

荒川 和夫プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。