ボクシングの前日本スーパーフェザー級チャンピオン尾川堅一(帝拳)が2月2日、後楽園ホールで約1年2カ月ぶりに復帰、フィリピン・ライト級チャンピオンのロルダン・アルデアと10回戦を行い、大差の判定勝ちを収めた。

尾川は2017年12月、国際ボクシング連盟(IBF)世界同級王座決定戦で判定勝ちしたが、ドーピング検査で陽性反応が出て、タイトル獲得を取り消され、さらに1年間の資格停止処分を受けていた。白星をつかみ、再び頂点を目指しスタートを切った。

試合前は不安を隠せなかったという。ファンの期待に応えられるのか。「お客さんが来てくれるのか怖かった。勝ったことで次につながる」と、試合後涙を流しながら神妙に語った。

尾川の右強打には定評があり、この試合でもKO勝ちを予想するファンが多かった。

序盤からペースを握ったが、残念ながら決め手を打ち込めず、不本意な判定に終わった。しかし、1年のブランクを考えると、合格点と言えるだろう。

振り返ると悪夢のような現実だった。米ラスベガスで激闘の末、小差の判定勝ち。誰もが快挙と信じた直後、陽性反応が出た。

本人は戸惑うだけだったが、無効試合となり「幸せの絶頂からどん底に突き落とされた」と大変なショックに見舞われたという。

それでも信念は揺るがなかった。昨年6月にジムワークを再開。「必ず世界チャンピオンになり、これまで支えていただいた人に恩返しをしたい」とひたすら汗を流した。

ボクサーとしての才能は早くから認められていた。

明治大学時代には日本拳法でインカレ団体優勝に貢献、2010年、プロボクサーとしてデビューした。

全日本新人王を獲得した後、日本王座に就き、世界を狙える器と高い評価を得た。

特に右ストレートには必殺の威力があり、一発でKOに仕留める破壊力がある。順調に階段を昇っていた矢先に、まさかの挫折を味わうことになる。

「悔しさはあります。でも明日を見て頑張るしかない」。リングに不気味なハードパンチャーが帰ってきた。

スーパーフェザー級にはライバルの伊藤雅雪(伴流)が世界ボクシング機構(WBO)王座に君臨している。

他団体の王者も実力者がそろい、世界への道は正直、容易ではないだろう。しかし、尾川は「僕にはボクシングしかないし、世界しか考えていません」と断言する。

その心意気が新たな旋風を巻き起こせるだろうか。(津江章二)