プロ野球ファンにとって、待ちに待った季節がやってきた。

2月1日、キャンプイン。自主トレの時期を経て、真新しいユニホームに身を包んだ選手が新たなスタートラインにつく。

注目の新人や、移籍組などの動きはいかに。そんな中で、オフに広島から巨人にFA移籍した丸佳浩に焦点を当ててみたい。

セリーグの2年連続MVPにして広島の3連覇の立役者。丸の移籍に関しては地元の広島でも残留の署名運動が行われるなど、大きな騒動にまで発展した。

しかし、30歳を前に丸の下した決断は新天地で新たな挑戦をするというものだった。

巨人との契約は5年25億円超で、初年度は4億5000万円と発表された。

だが、入団前までに流れた情報では同じく5年で30億超がもっぱら。果たしてどちらが真実に近いのか?

このオフにはエースの菅野智之が6億5000万円の球界最高年俸で契約を更改したが、チーム生え抜きで主将でもある坂本勇人らとのバランスもある。そうした背景もあり抑えめの発表がなされた可能性は否定できない。

もしくは、出来高条項を高く設定して最高なら来季年俸が6億超になる仕掛けがあるのだろう。

それにしても、丸の獲得が巨人にもたらす効果は計り知れない。まず、チャンピオンチームの主砲を引き抜くのだから、そのプラス効果は大だ。

その上、勝負弱かった近年の打線にあってクリーンアップの中心になり3割、30本塁打、100打点が計算できる。

さらにチームの懸案であったセンターラインの強化も図れる。4年ぶりに復帰した原辰徳監督にとっても、☆(ローマ数字5)奪回の切り札的存在と言える。

広島時代から、練習の虫。コツコツと努力を積み重ねることで一流の域まで達した。

丸のタイトル歴を見てみるとある特徴にたどり着く。レギュラー取りの第一歩となった2013年に盗塁王こそあるが打率、打点、本塁打の3冠部門は無縁。それでいて2年連続MVPの偉業は総合力のなせるわざだ。

2017年は171本の安打を重ねて最多安打賞、昨年は.468の出塁で最高出塁率のタイトルに輝く。これに6年連続のゴールデングラブ賞の堅守がある。

もう一つすごい数字を紹介すれば、近年の野球界で話題となるOPSの図抜けた成績がある。

これは出塁率+長打率で弾き出されるものでメジャーリーグなどでは最強打者の証とされる。

丸はこの値が実に10割9分5厘で両リーグトップ。132安打以外に39本塁打と130の四球(これも両リーグトップ)で、いかに相手投手を震え上がらせたかがわかる。

「若いころはストレート一本に的を絞ることもあったが、最近は甘い球が来るまで待てるようになった。ストレートに絞っていても内角の厳しいところや外角低めいっぱいをそうそう打てるわけじゃない。つまり打席での割り切りができるようになったのでしょう」

近年、丸が口にする打撃論を聞いた時、ある男を思い浮かべた。かつて3冠王に3度輝いた落合博満氏(元ロッテ、中日、巨人、日本ハム)である。

彼が全盛期に語った打撃術は次の通りだ。

「ストライクというのはベース板の上を通るもの、4打席立ったとするとそのうちの甘い球を一つ仕留めれば4打数1安打、2本ヒットにすれば(打率)5割でしょう? そう考えれば楽じゃない?」つまり、二人に共通する考え方は打席に立ったとき、いかにシンプルに、リラックスして投手と対峙していけるか。ここまでの境地に達するからこそできる名人の域なのだろう。

かつて「打撃の神様」と呼ばれた川上哲治氏は「ボールが止まって見える」と語り、世界のホームランキング・王貞治氏は「ボールの下、3分の1を打ち抜いた」とアーチ量産の秘訣を明かしたことがある。

毎年のようにFAで巨人のユニホームを着る選手はいるが、期待以上の成績を残した選手は少ない。

ある者はマスコミの注目度の高さに我を失い、ある者は衰えを克服できなかった。そんなG戦士にあって丸の目標となりそうなのが小笠原道大氏(現中日2軍監督)だろう。

2006年に日本ハムから巨人にFA移籍、パのMVP男は巨人1年目でもMVPの活躍でリーグ3連覇に貢献している。

4年連続☆(ローマ数字5)逸の逆境から反撃を誓う原巨人。やはり丸の働きが浮上の鍵を握っていることだけは間違いない。

荒川 和夫(あらかわ・かずお)プロフィル

スポーツニッポン新聞社入社以来、巨人、西武、ロッテ、横浜大洋(現DeNA)などの担当を歴任。編集局長、執行役員などを経て、現在はスポーツジャーナリストとして活躍中。