今季J1に復帰した名古屋は、最後までハラハラさせるシーズンだった。

12月1日、名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで行われた今季最終戦。厳しい残留争いの中、自力で残留を決めるためには勝利が絶対の条件だった。

奇しくも対戦相手の湘南には、2年前に1―3で敗れてクラブ史上初のJ2降格という屈辱を味わった苦い思い出がある。

試合序盤から、名古屋は積極的にストライカーのジョーへパスを回し、優位に進めた。

ところが前半19分、ミスからボールを失い、相手の左サイドからの攻撃で先制点を許した。続く37分にもPKを決められ、前半を0―2で終えた。

入れ替え戦に相当するJ1参入プレーオフ決定戦がちらつく得点差。絶体絶命の状況に立たされ、ハーフタイムで風間八宏監督は「おまえらの特徴はなんだ。2点差は君たちの力なら十分追いつける。後半勝つだけだ」と選手たちを力強く鼓舞した。

ベテランの玉田圭司は「少し気持ちの面で変わった」と選手間でもう一度話し合い、気持ちを高ぶらせた。

その後半は序盤こそ湘南に決定機を与えたが、丸山祐市らDFが体を張って守り、相馬勇紀と交代して出場した前田直輝が持ち前の個人技やジョーへの正確なクロスでチャンスをつくった。

そして迎えた後半22分、前半から相手の激しい寄せに苦しんでいたジョーがゴール前で倒されてPKを獲得。落ち着いて本人が決めた。

8分後には和泉竜司が前線に上げた浮き球が相手の手に当たり、またもPKとなってジョーが右隅に低く蹴り込んで同点とした。

だが反撃はここまで。勝利を目指して走り続けたがネットを揺らすことはできなかった。

試合終了の笛が鳴り、残留を決めて喜ぶ湘南とは対照的に、自力での残留がなくなった名古屋の選手やファンは沈痛な面持ちで他会場の結果を待つことになった。

そして、磐田が敗れて名古屋の15位確定が分かった瞬間、喜びを爆発させて盛り上がった。この日2得点のジョーも涙を流して喜んだ。

名古屋は今季、開幕2連勝と好スタートを切った。

ところが第4節の川崎戦から8連敗。ガブリエルシャビエルやジョーの不調をカバーできる選手がおらず、勝てない日々が続いた。

ワールドカップ(W杯)開催による2カ月の中断期間前は2勝3分け10敗で最下位。悪い流れを夏の補強で打開するしかなく、強化担当の大森征之スポーツダイレクターは「しっかり百パーセント獲得しないといけないという状況の中で力を使ったし、総合的に選手を取らないといけなかったので責任感もあった」と重圧を口にした。

そしてJ1川崎のエドゥアルドネット、J2松本の前田、特別指定選手で早大4年の相馬を獲得した。

正確なパスを出すエドゥアルドネットやDF能力に優れた中谷進之介、丸山が機能し守備面でのリスクが減った。

相手DFの脅威となる個人技を備える前田と相馬やジョーも本来の体のキレが戻り、8月1日の仙台戦から7連勝。息を吹き返し、残留へとつながった。

2度のハットトリックなど、チームの屋台骨を支えたジョーは、リーグ戦24得点で得点王に輝き「最後の最後まで苦しかったが、乗り越えることができた。FWとして得点王になるのはすごく大事な賞になる。自分一人では獲得できなかったので、チームメート、サポーターの皆さんに感謝している」と笑顔だった。

今季はホーム戦での1試合平均入場者数が2万4660人とクラブ史上最多を記録した。

近年は地元自治体の協力やクラブの努力などの甲斐もあって来場者は増えている。来季で就任3年目の風間監督は今季開幕前に「(試合会場を)どれだけの数のお客さんで埋められるか。それによって、いつも我々がやっているどう勝つか、どれだけできるかにつながる」と話し、ファンに対する思いをずっと持ち続けた。

ホーム最終戦後のセレモニーで小西工己社長は「まだ夢の登りかけの途中。来年も風間監督と見て楽しく、どこの教科書にも載っていない皆さんがわくわくするサッカーを披露していきたい」と自信満々に話した。

社長の言葉を信じ、来季はこれまで以上に期待したい。

神内 隆年(じんない・たかとし)プロフィル

2015年に共同通信入社。千葉支局から16年12月に名古屋支社運動部に異動し、名古屋グランパス、大相撲などを担当。京都・山城高では陸上とサッカー、早大では競走部に所属した。京都市出身。