進退が注目されていた世界ボクシング協会(WBA)前ミドル級チャンピオン村田諒太(帝拳)が12月4日、東京都内のジムで記者会見し、「もう一度、世界の舞台に立ちたい。このままでは終われない」と現役続行を表明した。

ボクシングほど「ヒーローの引き際」が難しいスポーツはないとも言われている。村田も王座を失った直後は「98パーセント、ほぼやめようと思った」という。

その後、気持ちが揺れ始め、周囲と相談し、再起を決断した。王座返り咲きは容易ではない。いばらの道をどう乗り越えていくのか。

10月、米ネバダ州ラスベガスでロブ・ブラント(米国)を相手に2度目の防衛戦に臨んだが、この試合には大きな夢が懸かっていた。勝てば元3団体統一王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との対決が現実味を帯びるところだった。

大げさではなく、実現すれば世界のファンの間で話題になるのは必至。その状況の中、村田は必勝を期してリングに上がった。スーパーファイトへの期待を込めて…。

しかし、結果は大差の判定負け。ゴロフキンとの対決はお流れとなった。しかもブラント戦はスピードに圧倒され、力の差も感じられた。

来年1月には33歳になる。真剣に引退を考えたのも当然だろう。「自分のボクシングが情けなかった」とまで振り返っている。

日本選手で初めてアマチュアとプロで世界の頂点をつかんだ。それも「黄金階級」と評価されるミドル級で。それだけに村田の去就には関心が集まっていた。

近年でも王者のまま引退した長谷川穂積、無念の思いでリングを去った山中慎介。実に対照的な二人だ。

1990年代に“浪速のジョー"として人気を集めた辰吉丈一郎は結局、引退宣言をすることなく現在に至っている。それほど引き際のタイミングは難しい。栄光を手にしたボクサーが、自らどう判断するのか。

そして、村田は再起という結論を出した。「ブラント戦のボクシングが最後でいいのか」と自問自答し、「納得して辞められるかどうか」と語った。

1階級上げ、スーパーミドル級への転向も視野に入れているという。

村田本人も再びベルトを巻くのが厳しいのは百も承知。しかし、敢えて困難に立ち向かおうとしている。その心意気は、いかにも「闘う哲学者」らしい。

新たなチャレンジで何を見せてくれるのか、楽しみに待ちたい。(津江章二)