スポーツ競技において、“強いチームを作る"。その方法はさまざまだ。例えば、能力が高い選手を集めて強豪チームを作るというやり方がある。プロ野球では、巨人のようにフリーエージェント(FA)制度を利用して実績豊富な魅力ある選手を集めて、それをかなえようとするチームがそれだ。一方、ドラフト指名した選手をしっかり鍛えて主力に育て上げるチームもある。今シーズン、両リーグで優勝した広島や西武はその代表と言える。

そして、チームを貫く哲学として欠かせないのがラグビー用語として知られる「ワン・フォア・オール、オール・フォア・ワン」。この精神にも通じる「フォア・ザ・チーム」を徹底して栄冠を得たチームがある。今季の世界ラリー選手権(WRC)で最終戦までもつれたマニュファクチャラーズ(製造者)部門を見事に制した「TOYOTA GAZOO Racing WRT」だ。2017年、1999年に撤退したトヨタは2017年に、18年ぶりにWRCに復帰した。そして、復帰2年目にしてその1999年以来通算4度目となる製造者部門のタイトルを獲得した。

11月21日、トヨタが「名古屋オフィス」で行った「WRCシーズンエンド取材会」において、最終戦のラリー・オーストラリアで自身の今季初優勝を果たして、チームに栄冠をもたらしたエースドライバーのヤリマッティ・ラトバラ(フィンランド)は、ラグビーの言葉にも似た文化を持つトヨタのスタイルが自分に合っていると語った。

「私が以前所属していたチームは個を重視し、ドライバーズチャンピオンシップを重視していたため、お互いの情報をシェアすることはありませんでした。一方、トヨタではドライバー同士の情報を共有し、マシンの改善につなげます。これは、チーム一丸となって製造者部門を制することを最優先しているからです。私のWRCキャリアにおいて、これほど情報がオープンなチームを他に知りません。まずはマシンを速くする。良いクルマを作る。その先にドライバーズチャンピオンシップもある。この文化は私に合っていると感じています」

このチームスタイルを生み出したのはチーム代表のトミ・マキネン(同)だ。彼自身、ドライバー選びにも、「フォア・ザ・チームに徹することが出来るドライバーを重視している」と明かしている。こう聞くと、まるで“スポ根"のような自己犠牲を求められているのでは? と、思う人がいるかもしれない。だが、実際は違う。マキネン代表が「チームはプロフェッショナルな集団で、プロフェッショナルの仕事をした先に今回の結果がある」と語るように、冷静に勝利を目指しデータや理論に基づいて運営するというチームの土台がそこにはある。

もちろん、今後に不安が無いわけではない。来季からチームに加わるドライバーのクリス・ミーク(英国)は、トヨタのチームスタイルについて問われると「自分にも好ましい」としながらも、同時に一つの問題点を口にした。

「素晴らしい能力の3人がそろうが、チャンピオンの椅子はひとつしかない」

ドライバー全員がドライビングに集中できるフェアな戦い。それをどうマネジメントするかが、来年以降のトヨタに求められる。結局のところ、強いチーム作りにゴールはない。地道に自分たちが信じるスタイルを徹底することが、強豪チームとして長くとどまることができるかの分岐点となる。まずは来年のWRCを注視することにしたい。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)