10月に、赤道直下の灼熱の大都市インドネシアのジャカルタで行われたアジアパラ大会。

車いすテニスでは男子シングルスを世界ランキング1位の国枝慎吾(ユニクロ)、女子シングルスを同2位の上地結衣(エイベックス)が制し、そろって2年後の東京パラリンピックの出場権を手にした。

車いすテニスが日本で人気の高いパラスポーツの一つになったのは、この二人のスター選手の存在が大きい。

それに呼応するかのように日本選手は年々力をつけており、男女ともに世界ランキング20位以内(11月5日現在)に日本勢がそれぞれ3人いる。

アジアパラ大会でも男子シングルスで日本が表彰台を独占、女子でも金、銅メダルを獲得し、世界レベルの強さをアジアの舞台で示した。

男子シングルスで銀メダルの33歳真田卓(凸版印刷)は注目すべき選手だ。テニスのデビス杯、フェド杯にあたる世界国別選手権で今年は日本が男子の世界王者となったが、真田は英国との決勝でリオデジャネイロ・パラリンピック金メダリストを破り、その立役者となった。

パラリンピックにはロンドン、リオと2大会連続出場。国枝とはダブルスのパートナーであり、長年同じ拠点で練習する仲間でありライバルでもある。

アジアパラ大会では選手村で国枝と同部屋になり、ゴキブリが出た時には虫が大の苦手の国枝に代わって退治したというエピソードがある。

力強いストロークが持ち味の攻撃的なテニスが特長だ。決勝は2―6、3―6で敗れたが、国枝がコート後方のフェンスに激突して倒れるほどの激戦を演じた。

10試合以上対戦し未勝利ながら、その差は確実に縮まっており「焦らずに倒せる機会をうかがいたい」と意気込む。

世界ランキングは9位で、上位8人しか出場できない四大大会に国枝とともに出場する日も近づいている。

女子は上地に次ぐ2番手争いが熾烈だ。ダブルスで上地とともに銀メダルを獲得した世界11位の22歳田中愛美(ブリヂストンスポーツアリーナ)は、所属企業の支援が手厚い。

親会社のブリヂストンは昨年から練習拠点のバリアフリー化を進めており、会社からは遠征費の援助を受け海外のツアー大会参戦も増えた。

5月に福岡で行われた飯塚国際大会は四大大会に次ぐ格付けで、準々決勝ではリオ・パラリンピック銀メダルのオランダ選手から初勝利を挙げた。

「大きな大会で勝てたことは今後の自信につながる」。物静かな普段とは対照的な鋭いフォアハンドショットが魅力だ。

女子シングルス銅メダルの23歳大谷桃子(スポーツクロマティ)は、栃木・作新学院高3年時の2013年に高校総体に出場した実力者。上地も「車いすで制限がかかる中で精度の高いショットを打てるのはすごい」と評価している。

佐賀県にある西九州大に通い、佐賀市内でスポーツ用品店を営む古賀雅博コーチとの「車いすの素人同士」で、練習メニューを試行錯誤しながらこなし力をつけた。

15年に競技を始め、金銭的な理由からツアー大会出場は約2年で13試合と少ないが、古賀コーチが「桃子の魅力はコストパフォーマンスが高いこと」と話すように世界ランクは17位につける。

それでも本人は「まだ学ばなきゃいけないこともある。あまり焦らず一つ一つ上達していくことで結果につながる」といたって謙虚だ。

このほか、日本には障害の重い選手が出場する男女共通上下肢障害のクラスに、世界4位の菅野浩二(リクルート)がいる。

世界トップクラスは国枝、上地だけではない。東京パラリンピックを目指す魅力的な選手が日本にはたくさんいることを、多くの人にぜひ知ってもらいたい。

さらに、パラアスリートが直面する壁についても語りたい。田中を指導する岩野耕作コーチは「愛美は東京以降も支援が約束されているけど、そうじゃない選手もたくさんいてみんな不安を抱えている」と歯がゆさを口にする。

これは車いすテニスに限った話ではない。トップレベルを除く大半の選手が、東京大会以降はスポンサーなどからの支援が不透明な状況なのだ。

彼らが目指すのは「2020」だけではない。競技に人生を捧げる彼らは、障害の有無に関わらず本物のトップアスリートであることを、私は切に訴えたい。

鍋田 実希(なべた・みき)プロフィル

2015年に共同通信入社。札幌支社編集部での勤務を経て16年5月に本社運動部へ。同年12月から福岡支社で陸上競技、サッカー、高校野球、パラスポーツなどを担当。東京都出身。