スポーツの秋となった。日本ではプロ野球やサッカーのJリーグなど、米国でも野球の大リーグなど、春に開幕した各スポーツのシーズンが、この10月から11月にかけてヤマ場を迎える。そして、入れ替わるようにウインタースポーツが幕開けする。スポーツ好きにはたまらない季節だ。

モータースポーツにおいても同様。この時期は観戦も含めて、まさにベストシーズンと言え、F1や世界ラリー選手権(WRC)ではチャンピオン争いが激しさを増している。中でも注目すべきが、F1の日本グランプリ(GP)で今季9勝目を挙げ、自身5度目の年間総合王者をほぼ手中にしている英国人ドライバーのルイス・ハミルトン(メルセデス)だ。

1950年から始まったF1の歴史において、5回以上のタイトルを獲得しているのは、2人しかいない。それは、51、54、55、56、57年で5度王者を獲得したアルゼンチン人ドライバーのファン・マニュエル・ファンジオと、94、95、2000年、01年、02年、03年、04年で7度の栄光に輝いたドイツ人ドライバーのミハエル・シューマッハーだ。ハミルトンが今年獲得すれば、史上3人目の大記録となる。

この記録がどれだけすごいことなのかを他スポーツと比較することは難しいだろう。そこで、野球の打者にとって最高の栄養とされる三冠王(打率、打点、本塁打の各部門でトップになること)がこれまでに何人いるか調べてみた。誕生から80年以上のプロ野球で7人が11回、それを超える140年の歴史を誇る大リーグでは15人で17回(1910年代までは打率、安打数、得点数)しか獲得していない。少なくとも、これらの三冠王打者たちと並び称されるレベルの記録であると筆者は考える。

そんな快挙とも言える史上3人目の記録に挑戦するハミルトンは1985年1月7日生まれの33歳。ドライバーとしての能力はまだまだ落ちそうにない。ちなみに、最年長世界王者記録は、57年に46歳で獲得したファンジオだ。加えて、ハミルトンが所属するメルセデスも近年のF1においては間違いなく最強チーム。マシンの能力に大きな影響を与えるPU(パワーユニット)に関する現在のレギュレーションは、2021年まで続くことが決まっており、23年まで延長される可能性も出てきた。それゆえ、今後もチームを移籍しなければ、ハミルトンには少なくとも21年までの3年間、23年まで継続するならば5年間、チャンピオンを獲得するチャンスがある。

その圧倒的な強さから「皇帝」と称されたシューマッハー。果たして、彼の記録に並び、塗り替える事ができるのか? 新世代王者のハミルトンは、自身が憧れたアイルトン・セナや、そのセナの後を継ぐようにF1に君臨したシューマッハーと同様にF1の「アイコン」となれるのか?

サーキットだけではなく、ツイッターとインスタグラム合計で約1300万人に自身の行動を自由に発信しているハミルトン。ファンとの関係が大きく変わっていく「会員制交流サイト(SNS)時代」における王者の一挙手一投足に世界が注目している。(モータースポーツジャーナリスト・田口浩次)