世界ボクシング協会(WBA)バンタム級チャンピオン井上尚弥(大橋)は10月7日、元WBAスーパー王者のフアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を1回KOで下し、初防衛を飾るとともに、異なる団体の世界王者ら8人で争うワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の同級1回戦を突破、準決勝に進んだ。

スーパースターへの期待がさらに高まり、大げさではなく、世界中のファンから熱い視線を浴びるのは間違いないだろう。

パヤノは五輪に2度出場後、プロ転向。サウスポーからの自在なテクニックでスーパー王者にまで上り詰めた。

戦前の予想は井上尚有利とは出ていたが、攻略するのは容易ではないという見方もあった。

最強を決めるWBSSの初戦。会場となった横浜アリーナには1万人が駆けつけ、光線を使った派手な演出で盛り上がる。

果たして井上は大舞台でどのようなボクシングを展開するのか。注目のゴングが鳴らされた。

衝撃の瞬間だった。開始1分過ぎ、井上が左ジャブに続く右ストレートを一撃。まともに受けたパヤノはもう立ち上がれない。わずか70秒の速攻劇。世界戦で日本人選手が記録した最速記録をマークした。

「手応えがものすごく拳に伝わってきた。あれで終わったと思った」と汗一つない余裕の表情で振り返った。

あるオールドファンがあきれたように大きな声を上げた。「歴史に残る試合だ。これほど強いボクサーは見たことがない」―。

関係者も異口同音に驚きのコメントを発した。同じバンタム級で活躍したファイティング原田氏は「これからもボクシング界を引っ張ってほしい」とエールを送り、長谷川穂積氏は「ただただ強い」、山中慎介氏も「一発目で決めるのはかなり難しい。脱帽です」と絶賛した。

WBSSプロモーターのカレ・ザワーランド氏は「イノウエはまさにモンスター。この惑星の中で一番のハードパンチャーかも知れない」とまで話した。

準決勝の相手は、国際ボクシング連盟(IBF)王者エマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)と同級3位ジェイソン・マロニー(オーストラリア)の勝者となる。

二人とも無敗の快進撃を続けており、17戦全勝(15KO)の井上との一戦は「不敗対決」としても話題になりそうだ。

世界チャンピオンが乱立する時代。存在感を示すには優勝の二文字しかない。

井上も「このトーナメントは自分が望んでいた大会」と語っている。

闘う度にすごみが増す怪物。あと2試合、華麗なパフォーマンスを誰もが待っている。(津江章二)