今季の競泳は会期前に行われた9月の福井国体をもって、ひとまずシーズンを終えた。

五輪2年前で「中間年」とも呼ばれる今季、パンパシフィック選手権やジャカルタ・アジア大会の国際大会で、日本男子のエース萩野公介(ブリヂストン)や瀬戸大也(ANA)らがいまひとつだった分、気を吐いたのが女子の18歳、池江璃花子(ルネサンス)だった。

今や老若男女問わず、誰もが一度は耳にし、あちらこちらの広告媒体などで見たことがあるだろう。

アジア大会では日本選手の1大会最多となる6個の金メダルを獲得し、MVPにも輝き、競泳界の話題を独占した。2020年東京五輪でのメダル獲得への期待は膨らむ一方だ。

彼女の主戦場は50、100メートルの自由形と100メートルバタフライだ。特に100メートルバタフライは表彰台に最も近いとされる。

だが、頂点は厳しい。世界記録は池江が目標に据え、16年リオデジャネイロ五輪覇者のサラ・ショーストロム(スウェーデン)が持つ55秒48。対して池江の日本記録は56秒08だ。

0秒6と書くと、大した差ではないように聞こえるが、実際に泳ぐと体半分の明らかな差がつく。絶対に無理とは言わないが、なかなか厳しい。

そんな中、8月のパンパシフィック選手権の際に、ある日本水連幹部が意外な種目で池江の金メダルの可能性を指摘した。

あくまで数字上、机上の空論に過ぎないが、私もなるほどと思った。その種目は200メートルバタフライである。

その幹部の計算ではこうだ。池江は100メートルバタフライなら56秒で泳ぐと先に書いた。

そこで最初の100メートルを自己ベストから3秒落とした59秒台で入ると想定する。池江は短距離が専門なので、残りの100メートルはかなり疲れるだろう。だから、前半から5秒落として1分4秒で帰ってくるとする。非常にざっくりとした計算だが、それでも2分3~4秒で泳ぐことになる。

ちなみにリオ五輪の女子200メートルバタフライの優勝タイムは2分4秒85。昨年の世界選手権は2分5秒26だった。

勝負がそんなに簡単にはいかないことは分かっている。だが、計算上では見事、池江が金メダルを獲得だ。こんな計算が成り立ってしまう池江の可能性の大きさにはあらためて感服するしかない。可能性はまさに無限だ。

ぜひ泳いでみてほしいところだが、話はそう簡単ではない。

なにしろ200メートルバタフライは競泳の中で最もきつい。タフさが売りの男子の瀬戸ですら「決勝まで3本泳ぐと、体がへろへろになって力が入らない」と語り、08年北京、12年ロンドン両五輪で2大会連続銅メダルを獲得した松田丈志は「後半のきつさは恐怖と言ってもいい」と話すほどだ。

池江は100メートル以上の種目にはあまり気が乗らないようだが、だまされたと思って一度トライしてみてはどうか。きっと「2バタ(200メートルバタフライ)もいける!」と手応えを得るはずだ。

榎元 竜二(えのもと・りゅうじ)プロフィル

2002年共同通信入社。名古屋支社、岐阜支局などを経て2012年から大阪運動部。15年から本社運動部で水泳、スキー・スノーボード、相撲などを担当。埼玉県出身。