交流戦を締めくくる6月21日、阪神のドラフト1位ルーキー、背番号「18」の馬場皐輔が満を持して1軍デビューのマウンドに上がった。

当初、先発予定だった20日のオリックス戦が雨天中止で順延となり、いきなりのスライド登板。馬場は6回を投げ、ソロ本塁打を含む被安打5、5奪三振、失点1の内容。試合は3―3で引き分け、勝ち負けこそ付かなかったが、大器の片鱗を感じさせた。

宮城県塩釜市出身で、中学3年のときに東日本大震災で被災した。「身動きができない状態が何日か続いた」と避難所で過ごしたこともあり、「被災された方の気持ち、環境を経験している。感謝しながら野球をしなければいけない」と、阪神大震災が起きた1月17日、阪神の一員として静かに祈りをささげた。

仙台育英高では春夏の甲子園大会に出場し、仙台大で最速155キロの直球と多彩な変化球を武器に台頭した。

「東北出身で、のんびり生きてきた」23歳は焦らずマイペースで「最初からバーンと投げられないから」と、山なりのキャッチボールで肩を慣らすルーティンを繰り返す。

今季の阪神投手陣は若手が目を引く活躍を見せている。

富士大から入団2年目の小野泰己は開幕から先発枠を担い、19歳の才木浩人は、伝統の一戦と言われる巨人戦でプロ初勝利を手にした。

期待のルーキーたちもプロの舞台で持ち味を発揮し、九州三菱自動車からドラフト5位の谷川昌希は救援で白星が転がり込む。

同2位の高橋遥人は、プロ初登板先発となった4月の広島戦で7回を被安打2で得点を許さず、初勝利をつかみ取った。

阪神の新人投手が初登板先発勝利を記録したのは、1959年に村山実が国鉄の金田正一に投げ勝って以来だった。

開幕1軍を逃した馬場だったが「練習することが選手として一番大事。しっかり、強いのを投げることが課題だった」と直球に磨きをかけた。周囲を気にせず、自分のペースで研鑽を続け、2軍戦5試合に登板して3勝1敗、防御率1・89の好成績を残し、交流戦最後の先発に抜てきされた。

6月21日の甲子園。先に昇格していた高校の同級生、熊谷敬宥とともに初めてのスターティングメンバーに名を連ねた。

1月に仙台市で公開した自主トレで「高校の時、甲子園の舞台に立って濃厚な3年間。またプロの厳しい世界で、二人で切磋琢磨して1軍の舞台で、二人で出られるように頑張りたい」とともに描いた青写真が実現した。

緊張もあって直球は走らなかったが、得意の変化球で打ち気をそらした。

「不思議な感じがしたが、懐かしい感じもあった」と振り返った遊撃を守る旧友の好守にも支えられ、苦しみながらも金本知憲監督が「合格点」を与える投球だった。

目標と色紙にしたためた『初勝利』こそならなかったが、高校時代に校歌を聞いた聖地で、プロ野球選手として歩み始めた。

「多少の緊張はあったが、目の前の打者に集中して向かっていく気持ちで投げた。いろんな課題を練習してまた成長できるようにしたい」。雪辱の機会に備え、大きな弧を描く、ゆったりとしたキャッチボールから再び鍛練を積む。

寺内 俊樹(てらうち・としき)プロフィル

2015年共同通信入社。仙台編集部で県警、震災などの取材を経て、16年5月に大阪運動部に異動し、アマチュアスポーツ、サッカー広島、大相撲などを担当。現在はプロ野球の阪神を受け持つ。栃木県出身。