ことしは関東甲信で初めて6月に梅雨明けした。道理で連日うだるような暑さである。

すっかり参ってしまい、せめてもの涼風を求めるべく出張帰りの足を伸ばして江の島の海に出掛けた。

梅雨が明けたということは、夏である。夏ということは、そう、ヨットの季節である。

案の定、梅雨明けしたその日の海には、うってつけのヨット日和にすごい速さで波を切って進むヨットがたくさん浮かんでいた。

セーリング競技もまさしくここからが夏本番と感じたのだが、その夏を前に、全国のセーラーたちには悲しいニュースが届いた。

現行の「470級」種目が、2020年東京五輪を“最後"に姿を消すことになってしまったのだ。

5月に開かれた国際セーリング連盟の中間総会で、2024年パリ五輪で実施するセーリング種目(10種目)が決定された。

結果、日本が得意とする男女別の470級は採用されないことになり、代わって男女混合2人乗りの小型船種目が選ばれたのだ。

セーリングは使用するヨットの種類や人数によって細かく種目が分かれている。

470級は小型船を2人乗りで操縦するもの。艇体の全長が470センチであることから通称「ヨンナナマル」と呼ばれ親しまれてきた。

乗員の適正体重は2人合計で130キロ前後とされ、五輪種目の中では最も軽量クラスなので、欧米人に比べて小柄な日本人に適した種目として、国内では最も盛んにレースが行われている。

日本は五輪におけるセーリング競技で今までに2個のメダルを獲得しているが、いずれも470級だ。

それだけに、このニュースに一番肩を落としたのは日本セーリング連盟(JSAF)だっただろう。

近年、日本の470級は世界で目覚ましい成績を挙げている。

世界のトップを争う2018年のワールドカップ(W杯)シリーズでは、女子でリオデジャネイロ五輪5位の実績を持つ吉田愛、吉岡美帆組(ベネッセ)をはじめ、男子では磯崎哲也(エス・ピー・ネットワーク)高柳彬(日本経済大)組、岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)外薗潤平(JR九州)組といった若手有望株がメダルを獲得している。

ナショナルチームの強化選手たちは年間に数多くの合宿を組み、「目指せ東京五輪金メダル」を標榜し厳しいトレーニングを積む。

五輪を目指す学生の若手セーラーたちからも「日本伝統の470級がなくなるのは残念すぎる」との声がたくさん上がっている。

もちろん、JSAFは五輪でのメダル獲得が最も期待される470級を残そうと、さまざまなロビー活動を行ったという。

ただ、今回470級がパリ五輪での種目に選ばれなかった理由は(1)他種目と比べてあまり普及していない(2)470級で使用される小型船の性能が他種目のヨットに比べ劣る―といったものだったそうだ。

既に欧米、特にフランスで人気のカイト種目(チームレース)が新しく加わったところをみると、2024年の自国開催五輪でメダルを狙う彼らのロビー活動は相当強力だったであろうと思わざるをえない。

スポーツにおける政治的な部分を、ここでうんぬんしたところで仕方がない。

それよりもJSAF関係者や470級選手たちは「こうなったらむしろ東京五輪で何が何でも470級でメダルを」と発奮しており、頼もしい限りだ。

最後に、ここまでの話に一つだけ付け加えさせてもらいたい。

前述の中間総会で決定したのは種目だけで、その種目で使用するヨットの種類は11月に決まる。つまり、470級に代わって決定された男女混合2人乗り種目で、470級と同じヨットが選ばれる可能性は少なからずあるということだ。

変更に関係なく選手たちは努力を重ねて五輪のメダルを狙うことと思うが、日本が東京五輪後も自信を持ってメダルを目指すことができるよう、応援したい。頑張れ、日の丸セーラー!

門馬 佐和子(もんま・さわこ)プロフィル

2016年共同通信入社。神戸支局、本社運動部を経て17年9月から名古屋運動部。プロ野球中日、冬季競技などを主に担当。生まれも育ちも千葉県木更津の海。