ツイッターやフェイスブックなどのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の世界では、動画を活用することが主流になりつつある。欧米の様々なニュースメディアのほか、米大リーグ(MLB)や米プロバスケットボール(NBA)といったスポーツ団体の積極的に取り組んでおり、世界レベルのプレーを手軽に見ることができる。そうした状況に国際オリンピック委員会(IOC)も割って入った。それが「オリンピック・チャンネル(OC)」だ。

IOCは2014年12月の総会で、五輪運動の未来に向けた工程表とも言える提言集「オリンピック・アジェンダ2020」を採択した。盛り込まれた40の提言のうち、「提言19」として「IOCはオリンピック・チャンネルを新たに設ける」ことがうたわれた。

この提言を受けて、16年8月、日本のタイヤ大手であるブリヂストンがパートナーとなって、OCが創設された。この経緯については前々回の当コラム=https://this.kiji.is/360953599238636641?c=39546741839462401=で紹介した。現在、OCをゼネラルマネジャー(GM)として牽引(けんいん)するのは、マーク・パークマン氏である。

パークマン氏の仕事は多岐にわたる。具体的に書くと、コンテンツ制作や動画配信に関する技術面の整備に始まり、スポンサーや動画の権利を保有する放送会社、国際競技団体、各国のオリンピック委員会、開催国のオリンピック組織委員会などとの交渉や調整に至るまで、OCの運用に関わるあらゆる分野を統括している。文字通り、「総支配人(ジェネラル・マネジャー)」だ。

MLBやNBA、プロフットボール(NFL)、男子プロゴルフ(PGA)など米国のプロスポーツ放送に関わってきた経歴を持つパークマン氏。オリンピック放送の世界と接点ができたのは、02年開催された冬季五輪ソルトレークシティー大会だった。

20年東京大会に対して、OCはどう取り組んでいくのか。パークマン氏に電子メールで質問してみた。「日本はOCにとって、大変重要なマーケットだ」と前置きしたパークマン氏は「私たちの目的の一つは20年に向けて盛り上げていくこと。コンテンツを通して、日本の視聴者に大会前と大会期間中、そして大会後を通じてオリンピックを体験してもらいたい」と述べた。

東京の組織委員会との連携も既に始まっているようだ。「東京大会まであと2年余り、私たちは東京の組織委と、日本だけでなく、世界の視聴者に向けてOCの認知度の最大化と普及について計画を練り始めている。また、既に発表されているが、日本国内における放送権を持つジャパン・コンソーシアムと連携し、日本のオリンピックファンが365日、五輪運動に触れ合えるようなプラットフォームを構築することもできる」。

OCはソーシャルメディアへの展開も積極的だ。フェイスブック(FB)やツイッター、インスタグラム、ユーチューブなど、主なSNSには進出済みだ。

パークマン氏はソーシャルメディアに対して、どのような考えを持っているのだろう。尋ねると、次のような答えが返ってきた。「私たちにとって、コンテンツの展開という意味ではソーシャルメディアが中心になる。現代の世界では、ソーシャルメディアを通じて、視聴者にコンテンツを提供し、ブランドを露出することが欠かせない」。

さらに、重要なのはSNSが持つシェア(共有)機能だとパークマン氏は指摘する。「OCが成功した要素としては、コンテンツを検索できることとシェアできることが挙げられる。シェアすることで、オリンピックに関わる人たちを活性化できる。OCはソーシャルメディアによって、選手、彼らの家族と友だち、観客、ファン、世界中の視聴者とのコミュニケーションに関わっている」。

「オリンピック・アジェンダ2020」が目指すオリンピックの将来に寄与することを目的に設置されたオリンピック・チャンネル。新しい時代に合わせたオリンピック運動、オリンピック精神を伝える一つの形だといえそうだ。

山崎 恵司(やまざき・えいじ)のプロフィル 1955年生まれ。79年に共同通信運動部に入り、プロ野球を中心に各種スポーツを取材。93年からニューヨーク支局で野茂英雄の大リーグデビューなどを取材。帰国後、福岡支社運動部長、スポーツデータ部長などを務め、現在はオリンピック・パラリンピック室委員。