筆者がその選手を取材できたのは一度だけ。だが、夢を追って米国で奮闘する姿や動向を注視し、その挑戦を陰ながら応援してきた。そして、その目標を実現するためにいよいよ重要な夏を迎えた。

男子バスケットボールで世界最高峰の米プロリーグ、NBA入りを目指す23歳の渡辺雄太である。

初めて直接プレーを見たときは衝撃的だった。

2016年6月。リオデジャネイロ五輪世界最終予選に臨む男子日本代表合宿に参加するため、全米大学体育協会(NCAA)1部のジョージ・ワシントン大に在籍していた渡辺は一時帰国していた。

203センチの長身ながら機動力とシュート力を備え、従来の日本人像と比べると規格外の動きだった。

ダンクシュートを連発し、練習を見ながら他紙の記者とともに感嘆の声を上げたことを今でもよく覚えている。

その時の代表合宿には米国で武者修行中のホープを取材しようとテレビ局も駆けつけていた。多くの記者に囲まれても渡辺におごった様子はなく、実に謙虚だった。筆者にはその姿が非常に好印象だった。

NBA入りというぶれない目標に向かってバスケットボールの本場米国で厳しい競争に身を置くからこそ、自分は決して突出した存在ではないということを理解しているからだろうと想像した。

NBAは近年、様々な国籍の選手が足を踏み入れ、国際化が進む。だが、日本にとっては遠い存在のままだ。

日本人でドラフト指名されたのは、1981年にウォリアーズから8巡10番目で指名を受けた230センチの岡山恭崇さんだけで、入団はせず実際にプレーするにはいたらなかった。

初めてコートに立ったのは、秋田・能代工高時代からスターだった2004年の田臥勇太(栃木)だけだ。

サンズの開幕ベンチ入りメンバー(12人)に選ばれ、ホークスを相手に173センチのポイントガードは7得点を記録した。

近年は日本人選手が「夢はNBA」と語ったとしても、その言葉に説得力を持たせることができる選手がどれだけいたか。

2014~15年シーズンにNBAの下部リーグでプレーした富樫勇樹(千葉)以外には、なかなかすぐには思い浮かばない。

2020年東京五輪へ向け、男子代表も今夏は大事な戦いが控える。

開催国枠を得るためには2019年ワールドカップ(W杯)で16強程度の力をつけることが必要とみられるが、そのW杯アジア1次予選で4戦全敗と大苦戦中だ。

6~7月の残る2試合へ向け、救世主としてジョージ・ワシントン大を卒業した渡辺はなんとしてでもほしい戦力だ。

ただ、NBAドラフトは6月21日(日本時間22日)。そこで指名されなかったとしても、若手が競い合うサマーリーグなどで腕を磨いて契約を目指す道もある。

日本代表か個人の夢か。個人的には迷わず自らの夢を追ってほしいと思う。

渡辺にとってことしは自身のバスケットボール人生を左右する大事な夏になるはずだ。

鈴木 敦史(すずき・あつし)プロフィル

2005年共同通信入社。大阪運動部を経て、広島支局で広島カープを取材。2010年12月から本社運動部で陸上、バスケットボール、大相撲を担当。北海道出身。