日本ハムから米大リーグに飛び込んだ大谷翔平は、エンゼルスでも投打の両面で期待にたがわぬ働きを見せている。日本では「二刀流」が大谷の代名詞だったが、英語で二刀流に相当する表現は何だろうか。

大谷の活躍を伝える英文のニュース記事では「two―way」という言い方が目立つ。「二通り」という意味だ。このほか「double―duty」も見かけるが、これは「二役」という訳になるだろう。

投手と打者の両方でプレーすると体にかかる負担は大きくなる。つまり、故障する可能性が高まるということだ。大リーグ関係者の関心は、大谷の能力に加えて、けがと無縁で大リーグ1年目のシーズンを終えることができるか、にも向けられている。

昨年12月、大リーグの公式サイト「MLB.com」は大谷の負傷の可能性について焦点を当てた記事を掲載した。リンゼー・ベーラ記者によるこの記事は今から半年ほど前に書かれているが、大谷の今後を見ていくうえで示唆に富んでいるので、紹介したい。

記事によると、2017年シーズンに故障者リスト(DL)に登録された選手のうち、半数以上に当たる52・5%が投手だった。ポジション別の2位は外野手で19・7%だから、投手のリスクが高いことがよく分かる。「けがの最大の可能性は投球にある、と言っていい」。スポーツ専門医のこんな談話をベーラ記者は引用している。

打者の故障では近年、腹斜筋を痛めるケースが増加している。この筋肉は胴体をひねったり、ねじったりする時に働くので、バットを強く振り抜いたり、剛速球を投げ込むときにも大きな役割を果たす。

例えば左打者だと、胴体を時計回りにねじる動作を繰り返すことになる。最近のトレーニングプログラムでは反対方向(左打者だと、反時計回り)に胴体をねじる動作を取り入れて、反対側の腹斜筋を鍛える。左右両方の筋肉のバランスを取ることが腹斜筋の故障をなくすと考えられている、と記事は指摘する。

大谷は右投げ左打ち。投球と打撃では胴体をねじる方向が逆なので、腹斜筋だけを取ってみると、右投げ右打ちや左投げ左打ちの選手よりも、片方の腹斜筋だけに負担が集中するようなことは自然に避けられている。

だからと言って、腹斜筋を痛める可能性がなくなるわけではない、とベーラ記者は続ける。バットを振るとき、ボールを投げるときに大谷が体をねじる力は相当なものだろう。疲労が蓄積すると、胴体をねじる強い力で腹斜筋が痛むことをあり得るので、疲労がたまらないようにケアすることが必要だとベーラ記者は見る。

故障する危険性は右肩にもあるようだ。投球で右肩が果たす役割はもちろん大きい。だが、意外なことに打撃で右肩にかかる負担が無視できないのだ。大谷が打席に立つと、右肩は投手寄り、バットスイングをリードする肩になる。

打球を真芯でとらえたり、空振りしたり。バットスイングを繰り返すことで、右肩の筋肉にはストレスがたまっていく。大谷が打者として、大リーグ投手のスピードボールに対応するため、日本よりも速いバットスイングを心がけるなら、積み重なるストレスも大きくなる。

大リーグの左打者にはフォロースルーの際、左手をバットから離して、右手だけでスイングを終えるタイプが少なくないが、このタイプの打者は右肩を痛める危険性が高いという。ベーラ記者は、大谷がスイングの最後まで、両手でバットを保持するので、右肩のストレスは小さいのでは、と見ている。

腹斜筋や右肩への負担などけがの発生が心配される部分について、記事は取り上げたが、故障の背景となる疲れを蓄積される要素がある。試合数が日本での143試合から162試合に増加する。さらに、その試合数を消化するために日本では考えられないようなハードスケジュール。東海岸と西海岸では3時間の時差がある中を移動する。ナイター終了後に移動して、翌日デーゲームということも珍しくない。

大谷が戦うのは、対戦する投手や打者だけではない。長いシーズンで蓄積する疲労やその疲労が呼び込むけがのリスクも敵となる。大谷がいかにけがを避けて、長い大リーグのシーズンを無事に乗り切れるか。投球や打撃だけでなく、それも見どころの一つだろう。

山崎 恵司(やまざき・えいじ)のプロフィル 1955年生まれ。79年に共同通信運動部に入り、プロ野球を中心に各種スポーツを取材。93年からニューヨーク支局で野茂英雄の大リーグデビューなどを取材。帰国後、福岡支社運動部長、スポーツデータ部長などを務め、現在はオリンピック・パラリンピック室委員。