平昌冬季オリンピックの熱気が冷め、2年後の東京五輪に向けて、いよいよモードが切り替わってきた。平昌でのスポーツ中継には、バーチャルリアリティー(VR)に代表される新たな取り組みが試験的に導入された。東京ではこれらの技術を本格的に取り込んだ中継番組を見ることになるのだろう。

オリンピックに押し寄せるデジタル化の波。国際オリンピック委員会(IOC)も手をこまねいているわけではない。新しい時代に対応するため、リオデジャネイロ五輪が終わった直後の2016年8月、インターネット上で動画コンテンツを展開する「オリンピック・チャンネル(OC)」を立ち上げた。

スペインの首都マドリードに本部を置くOCの広報担当者によると、視聴可能な動画の総数は1万1000本以上。平昌冬季五輪に関しては、全競技全種目の試合がアーカイブされているという。まだ、記憶に新しい真冬の熱戦をどこでも、いつでも再生動画で楽しめるのだ。

多くの日本のファンを感動させたフィギュアスケート男子の羽生結弦やスピードスケート女子の小平奈緒らの活躍も、もちろん見られる。

検索機能もあるので、簡単に見たい選手の動画を見つけられる。例えば、羽生結弦で試してみよう。アルファベット表記の「yuzuru hanyu」と打ち込み、検索。すると、平昌のハイライト映像のほか、14年ソチ冬季五輪の動画などが出てくる。加えて、ライバルであるハビエル・ヘルナンデスとの関係、ブライアン・オーサー・コーチが語る羽生など、多様な動画のリストが表示される。

OCが開設された16年8月以降の閲覧数は、ソーシャルメディア上も含め、14億回を超えている。広報担当によると、ターゲットにしているのは16歳から35歳の若い世代で、彼らの83%がソーシャルメディア上でオリンピックの動画に触れているという。

OCは63の国際競技団体とパートナーシップを結び、五輪以外のスポーツニュース動画も提供している。同時に、トップページ右上の言語ボタンを押せば、英語に加えて日中韓独仏など11の言語を選べるなど、多言語にも対応。世界中からアクセスして、スポーツの魅力に触れることができるように考えられている。

ニュースやコンテンツは日々、更新されている。例えば、4月18日のトップページには、ボストン・マラソンで優勝した川内優輝選手の記事が一番上に掲載されている。

OCには、記事や動画をツイッターやフェイスブックなどの会員制交流サイト(SNS)で共有できる機能もある。SNS上で、OCが提供する動画が拡散され、SNSユーザーである若い世代の間でスポーツや五輪の存在感が増す効果を狙っているようだ。

オリンピック・チャンネルのスタートを支えたのは日本のタイヤ大手、ブリヂストン。IOCは2016年8月15日付の報道発表資料で、IOCのトーマス・バッハ会長が直々にIOCの最高位スポンサー制度「TOPプログラム」の契約を結んでいるブリヂストンがオリンピック・チャンネルの創設パートナーに決まったことを明らかにした。

バッハ会長は報道発表資料の中で「ブリヂストンと密接に協力することで、オリンピック・チャンネルを世界中のファンに届けたい」と述べている。

ブリヂストンはソチ冬季五輪後の14年6月、TOPプログラムを契約した。このパートナーシップは10年間で、24年パリ五輪まで継続する。それとは別に、オリンピック・チャンネルのパートナーシップは20年東京五輪までの4年間となっている。

同社はまた、OC上で「チェース・ユア・ドリーム(夢を追いかけろ)」という独自の日本語コーナーを展開する。

デジタル時代の新しいオリンピックの楽しみ方をもたらすOC。デジタルに慣れ親しんでいる若い世代にオリンピック運動を伝える目的もあるだろう。この動画サイトが20年に向けて、存在感を高めていくのは間違いない。

山崎 恵司(やまざき・えいじ)のプロフィル 1955年生まれ。79年に共同通信運動部に入り、プロ野球を中心に各種スポーツを取材。93年からニューヨーク支局で野茂英雄の大リーグデビューなどを取材。帰国後、福岡支社運動部長、スポーツデータ部長などを務め、現在はオリンピック・パラリンピック室委員。