大阪・履正社高時代に「東の清宮、西の安田」と並び称された。プロ野球のロッテにドラフト1位で入団した安田尚憲内野手は、日本ハムに入った清宮幸太郎内野手(東京・早実高)と同じ左のホームランバッターだ。

昨春の選抜大会(甲子園)では準優勝に貢献し、U―18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)では3番を打った。

長打力不足が課題のロッテにとっては、長年待ち望んだスター候補。身長188センチ、体重95キロと既にプロでもトップクラスの体格を持つ。

身長、体重の数字は、巨人や米大リーグ、ヤンキースなどで活躍し、安田が憧れてきた松井秀喜氏の現役時代とくしくも同じ。「ゆくゆくはメジャーで活躍できるような選手になりたい」と夢を語る。

かつて米大リーグで活躍した井口資仁監督も、特に目をかけている。キャンプの全メニューを、同じ三塁手でチームリーダーでもある鈴木大地と一緒に消化させた。

さらに2月17日に台湾プロ野球ラミゴと行った今季初の対外試合では「4番・三塁」で先発起用。ファンの目も借りながら、本物のスターに育てようとする意図がうかがえる。

ところがプロはそんなに甘くはない。そのラミゴ戦でこそ1安打したが、その後の日本のチームとの練習試合、オープン戦では20打席無安打が続いた。まともにバットに当てさせてすらもらえない。

あっさりと三振するか、当てたとしても力ないフライを打ち上げることばかり。15打席無安打が続いたあたりで「さすがにしんどい」と本音が漏れた。

高校時代も練習は木製バットだったし、150キロ近い速球だって体感してきた。しかし「ホームベース上での球の速さ、強さは高校の投手とは全然違った」。プロのすごさは、球速表示では分からないものだった。

それでも、台湾プロ野球チームとの対戦を除けば、21打席目に生み出した初安打は、さすがスター候補と言わざるを得ないものだった。

3月6日の巨人とのオープン戦、5―5の九回2死満塁。オープン戦は延長がないため、どんな結果だろうが安田で試合は終わる。

フォークに反応すると、ボールはしぶとく三遊間を抜けた。「いい当たりではなかった」と謙遜するが、初安打がサヨナラ打。井口監督に「やっぱり持っている男」と言わしめた。

結局オープン戦での安打はそれだけで、イースタン・リーグの開幕に合わせて2軍行きとなった。言い渡されたのは3月16日の試合後、室内練習場で居残りの打ち込みをしている時だった。

しばらくマシンの剛速球を黙々と打ち返した後、取材に応じてくれた18歳の目は少し赤かった。それは猛練習で顔全体が紅潮していたからなのか、涙を流した後だったからなのか…。

「キャンプからの2カ月で自分は全てで1軍レベルに達していないと分かった。でも必死に勉強して成長もした。これからもどん欲にやっていく」

今季の大半は2軍で育成されることになるだろう。しかし、本拠地のZOZOマリンスタジアムで「4番・三塁・安田」とコールされる日は、そう遠くない。そんな確信めいたものを感じている。

森安 楽人(もりやす・らくと)プロフィール

2008年共同通信社入社。本社運動部、大阪社会部、同運動部で勤務。13年末に本社に戻り、主にゴルフ、相撲、バドミントン、テニスをカバー。18年から2度目のプロ野球担当。筑波大ではバドミントン部に所属した。大阪府出身。