「マウンドは自分の見せ場。普段おとなしいと思われているので、ギャップを見せたい」。プロ野球オリックスのドラフト1位ルーキー、田嶋大樹投手がキャンプ中、実戦登板を前に語った言葉が印象的だった。

若手が多く、明るく元気なイメージのあるオリックス投手陣の中では、あまり群れることなく、話すときも静かな田嶋だが、その言葉はいつも力強い。

キャンプでは、初日からほぼ毎日ブルペンに入り、投げ込むことで調整をしている。社会人時代にこの調整法に至ったという。

プロとしての第一歩だった大阪での入寮の日、「環境が変わっても、マイペースでやるのが自分のスタイル」と話しており、ハイペースがマイペースだった。

3月4日、DeNAとのオープン戦で対外試合に初登板。味方のエラーもあって3回2/3で3失点を喫したが、150キロを記録した直球を中心に内角を厳しく攻める投球が光り、「結果を求められる立場だけど、いろんな場面を経験したかった。次は数字にこだわりたい」。福良淳一監督ら首脳陣の評価も上々だった。

182センチ、77キロの細身の体から、左腕を振り下ろすしなやかなフォームが魅力だ。

栃木・佐野日大高時代は選抜大会(甲子園)で4強入りして注目されたが「けがが多くて、プロに行っても即戦力にはなれないと思った」とプロ志望届を出さなかった。

筆者が初めてそのピッチングを見たのは2017年の都市対抗野球大会(東京ドーム)。JR東日本のエースとしてすでに社会人ナンバーワンとの呼び声は高く、1回戦の伏木海陸運送戦では許したヒットはわずか1本で、貫禄の完封だった。

ことあるごとに「社会人に行ってよかった」と口にする。人脈をつくることができたこと、経験を積めたこと、そして何より人として成長できたことが3年間に詰まっている。

プロ野球に好きなチームはなく、目標の選手もいない。球場で観戦したことはほとんどなく、テレビで見たのも日本シリーズくらいと言うから驚きだ。

キャンプ初日に最も印象的だったことを聞かれると、グラウンド整備やユニホームの洗濯などを行う裏方の存在を挙げる。常に浮足立つことなく、自分と周りをじっくりと見ている。

父・秀則さんは「昔から前に出る子ではなかった。優勝したいとか、自分から言うのも聞いたことがない」と話す。

だから、田嶋が入団に際して「10勝以上で新人王」という高い目標を口にしたことには「すごくびっくりした」。もの静かだった少年も、プロという世界では強い意識をかき立てられるのだろう。

好きな食べ物はチーズ、甘い物。少女漫画が原作の映画を家で見るのが趣味で、「よく、中身女子だって言われます」と笑う。

最後の晩餐で食べたいものは「チーズダッカルビ」。来年のオフの楽しみは旅行。SNS映えは気にせず、風景を目に焼き付けたいそうだ。

マウンド以外ではやっぱり穏やかな、未来のエースの1年目が、楽しみで仕方がない。

福井 南都子(ふくい・なつこ)プロフィール

2016年共同通信社入社。千葉支局での県警担当を経て、本社運動部でアマチュアスポーツを担当。17年12月に大阪支社運動部に異動し、オリックス担当に。静岡県出身。