こんな41歳はなかなかいないだろう。昨季37年ぶりのリーグ2連覇を成し遂げたプロ野球広島において、今なお絶大な存在感を誇る新井貴浩選手だ。

出場機会が少なくなった昨年も、限られた出番で勝負強さを発揮し、精神的支柱としても大いに優勝に貢献した。1月にまた一つ年を重ねたが、球団史上初の3連覇、悲願の日本一を目指す上で、今年も欠かせない存在だ。

「新井さん」と親しみを込めて呼ばれるチーム最年長選手の活力は、ファンの後押しにある。

個人的な数字、成績には一切の興味を示さず、取材でも「いつも言っているけど、ファンを喜ばせたいだけ」と答えは一貫している。表向きのものではなく、うそ偽りのない発言だろう。

低迷期を経験した分、今の幸せな環境を実感し、ファンの存在が闘志を突き動かす。チーム内には若手が増え、旧市民球場時代を知らない選手も多くなった。

ただ、常々「これが当たり前だと思うなよ」「今は恵まれているんだよ」「ぜいたくになったら駄目」と声を掛け、警鐘を鳴らすことも忘れない。

若手、中堅選手との距離感も絶妙だ。「みんな弟みたいな感じ」と言うように、ベンチから成長を優しく見守ることもあれば、アドバイスを求められて親身になって助言を送る。

一方、昨年優勝が決まった甲子園球場で、20歳の高橋樹也投手に観客席に向かって万歳を促すよう指示を出していたのも印象的で、率先して盛り上げ役も買って出る。

年下の選手からいじられることも多々あるが、寛大な心で受け止め、チーム一丸の雰囲気は、自然と新井選手を中心にできあがっているように思える。

選手同士だけでなく、報道陣への取材対応にもいつも助けられている。

自ら報道陣に紛れて、質問を投げかけるちゃめっ気を見せることもあれば、髪形を変えた記者がいればいじり、囲み取材中に新婚の私の妻を褒め「おまえにはもったいない」との言葉もいただいた。

弊社には、2年連続で優勝手記を寄せてもらったのだが、自身の手記取材のはずなのに、チームのほとんどの選手の名前を挙げて、一人一人個別に賛辞を贈った受け答えには計り知れないカープ愛を感じた。

もちろん、いざ野球の練習となれば表情は一変する。

今オフの自主トレは順調そのものだったようで、毎年通っている広島市のスポーツジム「アスリート」では、上半身下半身とも、最優秀選手に輝いた2016年のシーズン前を超えるほどの数値を計測した。

キャンプでも例年通り坂道ダッシュを繰り返し、徹底した下半身強化に汗を流す。加齢に伴い、回復力には衰えを感じているというが、体はまだまだ若い選手に負けないぐらいに元気いっぱいだ。

広島工高から駒大を経て、ドラフト6位で入団したのが1999年。前田智徳、江藤智、金本知憲といったビッグネームを目の前にして、最初はファンみたいな気分だったという新人合同自主トレに始まり、今季が20年目。「ここまで長くやれるなんで想像できるわけない」と自分でも驚きを隠せない新井選手が、今年もまたカープファンの心をわしづかみにする。

山本駿(やまもと・しゅん)1988年生まれ。岐阜市出身。2011年入社。和歌山支局での警察担当を経て、13年に大阪運動部へ異動し、プロ野球阪神などを担当。17年から広島支局でカープを担当。