プロ入り前に思い描いていた光景とは違っていたと思う。ただ、どんなに苦しくても笑顔を絶やさず前向きな人だ。

日本ハムのドラフト1位新人、清宮幸太郎内野手(東京・早実高)は、自主トレーニング期間中に右手親指を負傷したため打撃はできず、守備に重点を置くメニューでプロとしてのスタートを切った。

バットを振れないだけにもどかしいだろうと心中を察するが、本人は「全然嫌じゃないので。最初から楽しいです。ただやらされているわけではなく、いろんなことを理解してやっている」とうれしそうに話した。

背番号「21」のユニホームを身にまとい、プロとしてスタートした2月1日。米アリゾナ州スコッツデールでのキャンプ初日は守備漬けの一日だった。

全体練習時に本来であれば打撃のメニューが組まれていた時間も清宮は別行動で、金子誠内野守備コーチと一緒にゴロの捕球の仕方、短い距離の送球など基本の反復練習に没頭していた。

高校通算最多とされる111本塁打を記録した打撃に関しては最大級の評価を受けている。ただ、守備に関してはまだまだ成長する余地が大きく残されている。

清宮本人も課題と感じているようで「自分でもすごく格好よく守備は見せたい。格好いい形はいい形だと思う。基本的なところをやるところはしっかりやりたい」と前向きに話した。

金子コーチは「ここはアリゾナだけど、ローマは一日にしてならずというでしょ。継続してやりなさいと言った」とハッパを掛けた。

海外キャンプながら初日は約100人の報道陣が詰めかけた。ファンの関心も高く、清宮が練習を終えるとサインを求める長蛇の列ができる。

注目を浴びながら練習をする環境でも18歳とは思えないほど落ち着いている。

「バッティングが取りえなのに。打てないのにこんなにたくさん来てもらってうれしい。モチベーションが上がるし、自分にとってプラスのことばかり」と、頼もしい。

1日の球場入りは午前7時前と薄暗い時間帯だったが、嫌な顔をすることなく丁寧に取材に応じていた。

一部別メニューで、思うように練習できない状況でもメディアを通して、ファンを大切にする姿勢はなかなか簡単にできることではない。

誠実な対応を見せたかと思えばお茶目なところもある。1日の昼食後も練習メニューが組まれていたが、小走りでクラブハウスから飛び出す場面があった。「食べるのが遅いので。カレーをちょっと盛りすぎちゃった」と苦笑しながら話し、報道陣を笑わせた。

まだ新人のため時間感覚が分からず初々しい一面も披露。選手として完璧を目指すのはいいのかもしれないが、マイペースな性格も人間味があっていいと思う。

思わぬ滑り出しとなったが、約1カ月に及ぶキャンプでいかにプロに適応する準備ができるか。

木製バットへの対応や守備力向上など大型ルーキーにとって乗り越えるべきハードルはいくつもある。栗山英樹監督は「走塁、守備、投げること、打つこと以外をまずはしっかり準備して。打つことに関してはある程度信頼している」と期待を口にした。

清宮は大切にしている文字に「道」を挙げている。「自分に与えられた道が必ずある。上りがあれば、下りもあったり。いろんなときがある。それでも希望をなくさないでいく」と力強く語ったことがある。

どんな苦境でも、明るく前向きに取り組んだ先には、道はきっと開けているはずだ。

山形英資(やまがた・えいし)2007年共同通信社入社。名古屋、大阪支社を経て本社運動部でプロ野球などを担当。16年からは札幌支社へ異動し日本ハムを取材している。熊本県出身。