2018年は戌(いぬ)年。現在のようにインターネットが普及する以前は、東京・日本橋兜町が日本の株式トレーダーの中心地で、東京証券取引所を中心に日本中の証券会社が集まっていた。そんな株の世界に生きる人たちの中には、「戌年は笑う」との格言があるそうだ。そんなことも相まって、多くの投資家が今年は好景気が続くと予想している。

ところで、モータースポーツの世界は株の世界とよく似ていて、景気変動の影響を大変受けやすい。例えば、F1日本グランプリ(GP)が鈴鹿サーキットで初めて開催された1987年はバブル景気の真っ最中だった。昨年、世界三大レースの一つといわれる米国伝統のインディアナポリス500マイル(インディ500)で日本人初優勝を成し遂げた佐藤琢磨が2002年にF1デビューを果たせたのも、ITバブルと連動していた。そして、ホンダが08年に、トヨタが09年に相次いでF1から撤退したのはリーマン・ショックによる景気減速が影響していた。

そんな中、日本のモータースポーツ界は世界ラリー選手権(WRC)と電気自動車(EV)レースの世界シリーズ「フォーミュラE」の日本開催誘致に向けて、動きだしている。開催地については、WRCは全日本ラリー選手権最終戦「新城ラリー」が行われる愛知県新城市周辺を、フォーミュラEは横浜市を、それぞれの最有力候補にしており地元自治体からの賛同も得られているという。警察の許可を取らなければならない道路使用に代表される諸問題があるので断言はできないが、開催に向けての障壁は決して高くないと言えるだろう。

実際のレース開催に当たっては、多額の資金も必要となる。F1のようにサーキット内で完結するレースと違ってWRCやフォーミュラEは公道を使用するため、コース整備などの費用が別に必要となるからだ。だが、WRCは現在同シリーズに参戦しているトヨタのグループ企業からの、フォーミュラEはEVに力を入れている日産に加え電気など関連産業からの支援が見込める。19年以降の開催決定が今年中に発表されるのではないかと期待するところだ。

となれば、1987年に日本人初のフル参戦ドライバーとしてF1デビューを果たした中嶋悟よろしく、WRCやフォーミュラEにフル参戦する日本人ドライバーの登場にも期待がかかる。実際、WRCに向けてはともに24歳の新井大輝と勝田貴元の二人が、フォーミュラEには昨年末にスポット参戦した元F1ドライバーの小林可夢偉などが有力候補として考えられている。

アジアや中東でのレースが増えているF1を見るまでもなく、国際レベルのレースイベントの開催できるか否かは、景気だけでなく開催を希望する国の勢いにも比例している。株式相場の格言のように、モータースポーツの世界も「戌年は笑う」となってほしいものだ。(モータジャーナリスト・田口浩次)