世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン井上尚弥(大橋)は昨年12月30日、7度目の防衛に成功すると、1階級上のバンタム級に転向することを明らかにした。

「バンタム級で一からスタートしたい。ゾクゾクするような試合をやりたい」。スーパーフライ級で揺るぎない実績を残したが、対戦相手の実力が物足りなかった。モンスター(怪物)と呼ばれる井上。新天地での飛躍が期待される。

井上が世界に衝撃を与えたのが2014年12月、伝説的強豪といわれたWBOスーパーフライ級王者オマール・ナルバエス(アルゼンチン)を2回KOで下し、タイトルを奪取した試合だ。

開始ゴングとともにスピード豊かな左右連打で圧倒、一気にフィニッシュした。あまりの見事さに誰もがあ然とするばかりだった。

海外メディア、ファンの間にも強さは浸透し、全階級を通じてもトップテンに入る才能と高い評価を受けた。

しかし、スーパーフライ級では挑戦者の役不足が目立った。すべての防衛戦が井上圧倒的有利と予想され、本人の燃える材料は少なかった。

加えて最大のライバルと見られ、統一戦が熱望された世界ボクシング評議会(WBC)同級王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア)が思わぬ失速。王座を失い、夢の対決は文字通り夢となっていた。

また、井上は減量に悩んでいたのも事実。「17年が一区切り」という気持ちも理解できる。

果たして、新天地で3階級制覇はなるのか。現在のバンタム級は戦国時代でもあり、個性ある男たちが世界のベルトを巻いている。

WBC王者ルイス・ネリ(メキシコ)は日本のエース山中慎介(帝拳)をTKOで破り王座に就いたが、薬物疑惑が浮上。3月、二人の再戦が決まった。

左ファイターでパワーが持ち味。WBOに君臨するゾラニ・テテ(南アフリカ)は恵まれたリーチを生かし、高度なテクニックが光っている。

WBAスーパー王者のライアン・バーネット(英国)は攻防兼備の右ファイターだ。

そう簡単ではないが、井上ならどの王者と闘っても勝利をつかめるような気がする。

WBAミドル級チャンピオン村田諒太(帝拳)が「強さは別格。無限大の才能の持ち主」と評する能力は秀でている。

バンタム級といえばスリリングな強打の歴史がある。「黄金のバンタム」ことエデル・ジョフレ(ブラジル)、そのジョフレに判定勝ちしたファイティング原田(笹崎)、屈指のハードパンチャーとして知られるルーベン・オリバレス、カルロス・サラテ(ともにメキシコ)…。

井上がそのバンタム級をどう攻略していくのか。興味は尽きない。(津江章二)