今年も1年納めの12月になった。「師走」の名の通り、多くの人が忙しさから時間に追われている。世間では宅配便のアルバイト金額が高騰していると話題になっている。働く人の奪い合い。それはつまり、働く時間の奪い合いと言える。

同じことはスポーツの世界においても言えるのではないだろうか。つまり、視聴者の時間をどれだけ“奪って"いるかが、そのスポーツへの注目度と連動しているのではないだろうか。日本ではプロ野球は1チームあたり年間143試合で、サッカーのJ1は1チームあたり年間34試合。次に米国に目を向けると、バスケットボールのNBAは1チームあたり年間84試合、アメリカンフットボールのNFLは16試合。NFLは試合数こそ少ないが、9月のレギュラーシーズン開幕から2月上旬に行われるリーグ優勝決定戦の「スーパーボウル」までの約半年間、アメリカスポーツ界を文字通り“ジャック"する。それは、スーパーボウルの視聴率が毎年40%を超えていることでも明らかだ。

一方でモータースポーツ界に目を移すと、良い話題が続き大いに盛り上がった1年になった。まず、18年振りに世界ラリー選手権(WRC)に復帰したトヨタが2月に開催された2戦目の「ラリー・スウェーデン」でいきなり優勝。5月には世界三大自動車レースの一つでアメリカ伝統の「インディアナポリス500マイル(インディ500)」でホンダの佐藤琢磨が日本人初優勝の快挙を成し遂げる。6月には、こちらも世界三大レースの一つでフランス伝統の自動車耐久レース「ルマン24時間」の予選でトヨタの小林可夢偉が従来のコースレコードを2秒以上も短縮する驚異的なタイムでポールポジションを獲得した。

とはいえ、世間は佐藤琢磨のインディ500日本人初制覇を多少騒いだ程度。今年、全20戦を開催したF1も人気低下を言われているが、モータースポーツは開催スケジュールが不規則なため定期的に視聴者の目に付くことがない。そのことが問題なのではないだろうか。ところが、この問題をクリアして、アメリカで大成功しているのがストックカー・レースのNASCARだ。レギュラーシーズンの全36戦を毎週テレビ放送している。結果、テレビ観戦することが習慣化した「リピート視聴者」が増加。それに伴って、サーキットにも多くの人でにぎわうようになった。現在ではNASCARは、NFL、NBA MLB(大リーグ)A、NHL(アイスホッケー)と並び「アメリカ五大メジャースポーツ」の一つに数えられるまでになった。

NASCARのように毎週レースを開催するカテゴリーを作ることは難しいが、もし、トヨタやホンダを筆頭にモータースポーツに参戦する日本車メーカーと二輪車メーカーが共同で、どこかの全国ネット局の午後5時から午後11時の間で30分番組枠を毎週購入し、カテゴリー等を問わずレース内容や結果を放送したら、モータースポーツ人気の復権に役立つのではないだろうか?

またテレビ離れが言われる昨今、局の垣根を乗り越え、テレビ番組の見逃し配信をする、民放公式テレビポータルの「TVer」は、アプリダウンロード数が1000万を超えたという。個の力は弱くとも、集合すれば強い。戦国武将毛利元就が3人の息子に送った書状で、これを基に「3本の矢」の逸話が生まれたとされる「三子教訓状」をテレビコンテンツで実践した形だ。モータースポーツ界もこれらの新たな施策を実践できたら、人々の関心をもっと高められるはずだ。(モータージャーナリスト・田口浩次)