2年に一度開催される「第45回東京モーターショー」が10月27日から11月5日にかけて東京ビッグサイトで行われた。累計77万1200人が訪れた今回のモーターショーで大きな注目を集めたのはEV(エレクトリック・ビークル)、つまり電気自動車だ。各メーカーともこぞって、新型車やコンセプトカーを出展した。背景にあるのは、2040年をめどにEVへ完全移行するといわれている欧州の自動車事情がある。そんな時代を先取りしたシリーズがモータースポーツにもある。14年に新設されたEVレースの世界シリーズ「フォーミュラE」だ。

フォーミュラEはすでに3季目を終え、12月には4年目のシーズンを始める。全14戦を予定している今季は同2、3日に2レースを連続開催する香港大会で開幕する。そして、この香港大会へのスポット参戦が決まったのが、元F1ドライバーの小林可夢偉だ。

可夢偉は12年のF1日本グランプリ(GP)で鈴木亜久里以来22年振りとなる母国レースでの表彰台(3位)を飾ったほか、今年6月のルマン24時間耐久レースでは予選でコースレコードを2秒も更新してポールポジションを獲得するという快挙を次々と成し遂げてきた。そして、新たな挑戦の場としてフォーミュラEを選択した。

可夢偉は現在、世界耐久選手権(WEC)にトヨタのワークスドライバーとして参戦するほか、国内フォーミュラ最高峰のスーパーフォーミュラにも参戦している。それゆえ、これらのレースを欠場して新たなレースに参戦することは難しい。今回のフォーミュラE・香港大会へのスポット参戦も契約するトヨタと折衝した結果、年内のWEC活動に影響がないことから了承を得たのだという。

「すべてがぶっつけ本番なので、乗って走ってみるまで余計なことは考えないようにします」

そう意気込みを語った可夢偉は、新たな挑戦が楽しみだとしてこう言葉を継いだ。

「フォーミュラEは元F1ドライバーや現役WECドライバーが多く参戦していてレベルが高いので、挑戦しがいがあります。もともと、フォーミュラEにも興味がありましたし」

13年にはフェラーリのGT3カーでWECを戦うなど、さまざまなカテゴリーのマシンに搭乗することをいとわない可夢偉。そんな彼にとって、EVレースの最高峰に位置するフォーミュラEは新たな挑戦としてずっと試したかったカテゴリーだったのだそうだ。

何かを始めようと思い立っても、実際にやるとなると立ち止まってしまう―。読者の中にもそんな経験を持つ人がいるのではないだろうか。事実、常に前を見て新たな世界に挑戦することはそんなに容易ではない。だが、小林可夢偉という男は挑戦者としての気持ちを忘れない。その姿と心意気に多くの人が学び、共感を覚えるに違いない。(モータージャーナリスト・田口浩次)