取材しながら、襟を正されているような気分だった。

フィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦のスケートカナダ。GPデビュー戦となった女子注目の16歳、本田真凜(大阪・関大高)がショートプログラム(SP)を演じた後のことだ。

ミスが続き12人中10番目と大きく出遅れた本田への説教を終えた浜田美栄コーチは「シニアで戦うような練習をしてきていない。精神的にも技術的にも足らない」といつになく厳しいコメントを並べた。

そして最後に「メディアのみなさんも、あの子に甘すぎる。それに甘えていては競技者としては絶対駄目。真凜が勘違いしてしまうのが怖い」と漏らした。

子役として活躍する三つ年下の望結(みゆ)のお姉ちゃんというイメージを変えたのは、2016年3月の世界ジュニア選手権。トップ選手の登竜門とも言える大会で初優勝を飾ると、一気に注目を集めた。

出発時にわずか二人だった報道陣は、金メダルを手に帰国すると約40人に膨れ上がっていたほどだ。

今年の世界ジュニアでは2位だったものの、日本女子ジュニアでは初となる合計200点超えをマークし、来年2月に控える平昌冬季五輪代表の有力候補の一人として名前が挙がるようになった。

練習嫌いを公言するなど天真爛漫な性格で、取材に対してもユーモアを交えながら愛嬌たっぷりに思いを語る。

長年フィギュア人気を支えた浅田真央さんの引退もあり、新たなスター選手として注目度は増す一方だ。CMにも多く出演し、大会へ飛び立つ前の空港から多くの報道陣が彼女の周りには集まる。

報道が過熱気味になる中、そういう状況を見かねたかのような浜田コーチの指摘だった。

全日本選手権3連覇中の宮原知子(関大)や今季GPシリーズで2戦続けて表彰台に立った樋口新葉(東京・日本橋女学館高)、昨季の四大陸選手権女王の三原舞依(シスメックス)ら実力者がそろう中での出場2枠の五輪代表争いは熾烈だ。

長い手足を生かした華のあるスケーティングが本田の魅力だが、浜田コーチは「アイスショーならスピンが少々足らなくても拍手してくれる。でもそれでは試合に勝てない。才能はないわけではないので、練習さえちゃんとやれれば確実に上がっていく」と言う。

もっと厳しいところまで競技を追求してほしいというのがコーチとしての願いであり、そのためにも必要以上に持ち上げすぎないようにというのが周囲への要望だろう。

本田はスケートカナダ5位に続いてGPシリーズ第3戦の中国杯でも5位となり、シリーズ上位6選手で争うファイナル進出は逃した。

五輪代表へ向けて、候補選手が直接ぶつかる12月21日から始まる代表最終選考会の全日本選手権(東京)に全てを懸けることになり、本人も「諦めたら夢は叶わない。最後まで後悔がないように練習して、自信を持って『私が出るんだ』という気持ちで臨みたい」と氷上決戦を見据える。

どんな結末が待っているのか、冷静な目で取材したい。

藤原 慎也(ふじわら・しんや)1984年生まれ。大阪府出身。全国紙で5年間、主に警察、司法を担当し、2014年4月に共同通信に入社。名古屋支社でフィギュアスケート、野球、サッカーなどを取材。