明治神宮野球大会は、11月14日の高校の部決勝は高知の明徳義塾が長崎の創成館を下して36年ぶりの優勝を飾り、15日の大学の部は首都大学リーグの日体大が北海道の星槎道都大を下して37年ぶりに優勝し、北海道勢初の日本一はならなかった。

今年で48回目となるこの大会は、各地区の秋季大会を勝ち抜いた10高校と11大学が出場する。

全国大会ではあるが、規模において春夏の甲子園大会や6月の全日本大学選手権と比べても小さい。だが、特に全国的に名前が知られていない地方の大学の野球部にとって「大学日本一」は大きな魅力となる。

▽まず野球で有名校に

受験生に影響を与えることから、大学が「スポーツ推薦枠」などをフルに使って有力選手を入学させる実態は、かつて高校野球でまず有名となった。

750以上ある大学の中で、私立は生き残りをかけているのである。

▽高校野球の人気は変わらず

同大会の高校野球の人気は相変わらずすごい。13日の準決勝は月曜日にもかかわらず神宮球場に1万2000人が詰め掛けた。

高校の部は優勝したチームの地区に来春のセンバツ大会で「明治神宮大会枠」が一つ与えられるから、注目度が高いと言われる。

今回は明徳の四国がセンバツで4校選ばれることになり、明徳の馬渕史郎監督は「四国が1校増えてうれしい」と喜んだが、地区によっては必ずしもそうではない。強豪のライバルが甲子園に出て来るかもしれないからだ。

▽本音は果たして

実際、試合を見ていても全国大会を経験できることを歓迎する監督は多いが、既に来春の甲子園大会出場を事実上獲得しているチームばかりだから、何が何でも勝たなければならないという必死さはあまり伝わってこない。新戦力の発掘や課題を試す場と言っていい。

強豪校の東京・日大三や大阪桐蔭があっさり負けたあたりに、そんな感想を持つ。

▽早大の優勝は1度だけ

高校と違って、大学の全国大会は全日本大学選手権とこの大会しかない。早大の高橋広監督が2年前にこんなことを言ったことがあった。

「リーグ戦の優勝が最優先。そして全日本大学選手権に勝つのが次になる。でも、最近の情勢を見ると、明治神宮大会もそろそろ視野に入れないといけない」

早大は東京六大学リーグで最多の45度の優勝を誇り、全日本大学選手権は5度制覇し、準優勝は4度。しかし、明治神宮大会は2010年に初めて優勝(準優勝は5度)を果たした。なにやら高橋監督の言葉が実感できる結果ではなかろうか。

▽それでも強い東京六大学

明治神宮大会の最多優勝は東京六大学の明大が6度で、続いて5度の駒大と亜大の東都大学勢だ。

やはり、いい選手が集まるリーグは強いのだが、東都は東京六大学のライバルとして、この全国大会優勝を大きな目標にしている。

人気面で劣るのをカバーする意味でも「実力の東都」を売り文句にしたいのである。

各校はこぞって春秋のリーグ戦、全日本大学選手権、明治神宮大会の「4冠制覇」を目標にし、亜大や東洋大などが実現させた。

▽東都に続け

東海大や日体大などの首都大学も東都に続けとばかりに力を入れる。

東海大は元巨人監督の原辰徳氏や巨人のエース菅野智之投手らを輩出しており、明治神宮大会も3度(全日本大学選手権は4度)優勝した実力を持つが、リーグ戦を行う球場探しに苦労するのが実態であり、スポーツマスコミでの扱いも詳しく報じられる東京六大学と東都とは比べようもない。

▽中京学院大の衝撃

昨年の全日本大学選手権で初出場の岐阜の中京学院大が優勝して話題となった。

選手たちは練習後にはコンビニなどでアルバイトして生活費を稼ぐ野球生活ながら、大学日本一になり、吉川尚輝遊撃手は巨人にドラフト1位指名され入団した。

もちろん優勝するには実力がないと駄目なのは当然だが、近藤正監督は「エンジョイベースボール」を掲げ「1回戦負けを想像してユニホームの替えも持って来ていない」と話し、現代っ子を自由にプレーさせての優勝は記憶に新しい。広島の菊池涼介も、こんな環境で伸び伸びと育ったのだろう。

各大学の実力差が昔のように開いていないことを証明したとも言える。

その背景にはプロ、アマ交流が事実上解禁され、有名大学や高校野球で活躍したり社会人野球やプロ経験者ら指導者が地方に散らばっていることもある。

▽次々と名乗り

群馬の上武大、神奈川の桐蔭横浜大などが全国大会で注目を集めた。

さらに今年のプロ野球日本シリーズで活躍したDeNAの浜口遥大投手は神奈川大時代に脚光を浴び、昨年のソフトバンク1位入団の剛速球投手、創価大の田中正義は全日本大学選手権で強烈デビューを飾り、プロのスカウトの目に留まった。

ヤクルトの小川泰弘投手は創価大で、楽天の奪三振王の則本昂大は三重中京大時代の大会で全国的に知られるようになった選手である。

▽慶大は初戦敗退

今年の明治神宮大会では岡山の環太平洋大が慶大に快勝した。今年の全日本大学選手権で、東洋大が東海大北海道にあっさり初戦で敗れた時の衝撃に似ている。

その環太平洋大が、準決勝で星槎道都大にコールドゲームで負けて2度びっくり。勝負事だから不思議ではないが、こうしたことが年々多くなっているのは間違いない。

2009年の全日本大学で準優勝した岩手の富士大を率いた青木久典監督は「大学が力を入れ、有名選手を全国視野で見て獲得している。授業料免除など大きいですからね。選手を勢いに乗せてやると、結構やれる力は練習で養われている。無名大学でも勝って不思議ではない」と話した。

その青木監督は、決勝の相手だった母校の法大に呼ばれて監督となった。

田坂貢二(たさか・こうじ)のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆