「理想の上司ランキング」に入らないだろうか。今季、プロ野球セ・リーグの3位から日本シリーズに進出したDeNAのラミレス監督のことだ。

筆者は昨年から2年間DeNAベイスターズを担当。間近で見てきたその姿勢は、まさに理想像に近い。

何しろ前向きだ。部下のモチベーションを上げるのがうまい。「『この選手を使う』と決断した時は、結果がうまくいこうがいくまいが、後悔はしない。信頼して使う」との信条を持つ。

ラミレス政権下で不動のリードオフマンになった桑原には打率2割2分8厘と低迷した4月にも、最初の3試合で無安打だった日本シリーズでも「まったく心配ない。すぐに打ち出すよ」と同様の言葉で鼓舞した。

今春のキャンプではコーチ陣にスイス製の腕時計をプレゼントする気配りも。今季は部下の能力を把握し、采配にも柔軟性を見せた。短期決戦では大胆な一手も披露し、「業務面」でも結果を残した。

ちなみに報道陣にも優しい。試合前の囲み取材で聞きにくい質問を申し訳なさそうにした記者に対しても、その囲みが解けた後に笑顔で「ナイストライ」と、記者の肩をぽんとたたく。その優しさに救われた記者は多いはずだ。

優しく「ダイジョウブ?」「ゲンキ?」と日本語で語りかけられれば、選手も担当記者も自然と笑顔になる。

主将の筒香は「監督はいいときも悪いときも変わらない。僕たちにはわからない苦しみがあると思うが、表に出さない。そんな人を初めて見た」と尊敬のまなざしを向ける。

その筒香も上司としての資質を見せている。立場的には主任か係長か。

ロッカールームでは大音量でラテンの音楽を流し、試合前の練習では選手とじゃれ合い明るい雰囲気をつくる。グラウンド内でもチームを常に鼓舞し続けてきた。

9月に先発でプロ入り後最短の2回5失点でKOされた2年目左腕の今永投手にはその試合中のベンチで「みんなの代表としてマウンドに上がっている。不安なものを一掃しろ」と叱咤激励。不調の時期もあった山崎投手には「マウンドに何か持っていけるのか?」と問いかけた。抑え右腕は「持って行けるのはグラブとボール、あとは自信だけ。筒香さんに言われてはっとした」と振り返る。

日本シリーズ第5戦で先発し、五回途中4失点だった石田投手には試合後すぐに声を掛けた。「やるべきことはやっている。自分の力を出して打たれたのが結果なら、まだ上を目指せるってことだろう」

ときに厳しく、ときに優しく。背番号25には泰然とした空気が漂う。日本を代表する強打者に強烈なキャプテンシーが加われば、誰もが付いていくだろう。

ともに明るい雰囲気をつくったラミレス監督も「現役時代も含めてこれまで見てきた中でベストのキャプテン」と賛辞を惜しまない。

リーグ優勝と日本一は来季にお預けとなった。だが、求心力のある監督と主将の下、一丸となったチームは来季、より一層の飛躍を見せてくれるに違いない。

小泉 智(こいずみ・さとる)2007年入社。福岡運動部、大阪運動部、ニューヨーク支局を経て16年1月からプロ野球DeNAを担当。