10月26日に行われたプロ野球ドラフト会議で、注目の早実高の清宮幸太郎内野手の交渉権を獲得したのは日本ハムだった。

ロッテ、ヤクルト、日本ハム、巨人、楽天、阪神、ソフトバンクが1位指名。清宮は高校生としては福留孝介(PL学園高、現阪神)以来という最多タイの7球団から指名された。

プロ行きを表明した当初から5、6球団の指名を予想していたが、やはり高校通算111本塁打という高校生離れした長打力を評価した球団が、その人気と相まって半数を超えたのだろう。それより日本ハムの強運ぶりに驚いた。

▽満面の笑みの栗山監督

日本ハムの栗山英樹監督がこれ以上ない笑顔だったのは、もちろん清宮を高く評価していたからだろうが、今オフにメジャー行きが決まっている大谷翔平の後釜を獲得できるからであろう。

清宮が9月末にプロ行きを表明しプロ10球団と面談して球団方針などを聞いたが、この中に日本ハムは広島とともに入っていなかった。

広島は今夏の甲子園大会で清原和博氏の持つ5本を抜く個人最多の6本塁打した地元、広陵高の中村奨成捕手の1位指名を決めていたからだ。

日本ハムは栗山監督が清宮の父、克幸氏(ラグビートップリーグ、ヤマハ発動機監督)と親しい間柄と言われており、1位指名への手順に抜かりがあろうはずはない。それはドラフト直後の記者会見での清宮の反応を見れば分かった。

楽しみな育成方針

今後は入団交渉、入団会見、背番号決定、自主トレーニング、キャンプと、清宮の一挙手一投足が大きく取り上げられるのは間違いない。

日本ハムは2012年から13年にかけての大谷獲得時のフィーバーぶりの経験もあり大きな混乱はないだろう。

大谷には「メジャーへの工程表」を示して入団交渉を成功させたのは記憶に新しい。“清宮プロジェクト"を作るなりして、1軍で通用する体力、実力を付けさせると思う。

栗山監督は2020年東京五輪での「日本の4番」という具体的な目標を持たせようとしているとも言われているが2、3年かけてじっくり育ててもらいたい。

▽浮かれていない清宮

日本ハムには早実高の大先輩が二人いる。一人は斎藤佑樹であり、もう一人は元祖「甲子園のアイドル」の元ヤクルト投手、荒木大輔氏で、2軍監督に就任するそうだ。

もし清宮が大成しメジャーを希望すれば、大谷の例を見るまでもなくポスティングを容認している日本ハムにはそれをかなえる態勢があるのだ。

清宮は日本ハムについて「素晴らしい選手が育っていて、他球団よりも育成に力を入れている印象がある」と話し、自らの今後については「やっと(プロの)スタートラインに立てた。走攻守全部を伸ばしたい。まず実力を付けること」と気負ったところはない。

清宮がプロで通用するには技術面はもちろんだが、まずは動けるように体を絞ることだろう。それには今からトレーニングを始めなければいけない。

▽スカウトの力量

社会人のナンバーワン左腕の田嶋大樹(JR東日本)がオリックスに指名されたように、人気、注目選手がパ・リーグに多く指名された今ドラフトだが、今年ほど各球団スカウトの眼力が試されている年は珍しいと思う。

清宮を外した6球団のうち4球団は外れ1位でも競合してくじに見放され、ソフトバンクなどは3度も外した。

単独1位指名はDeNAの東克樹投手だけ。立命大で2度のノーヒットノーランを達成した左腕である。

「外れ、外れ」は1位に限らず2位指名でも見られた。こうなれば、球団の補強方針とともに、スカウトの力量を問ういい機会である。

▽巨人は捕手2人

清宮、さらに清宮と並ぶ高校生スラッガーの安田尚憲内野手(ロッテが指名)を外した阪神は馬場皐輔投手(仙台大)を1位に。同じように1位で2度負けた巨人は中大の鍬原拓也投手を指名した。

鍬原は150キロを超す速球とシンカーが特長で三振を取れるタイプ。ただ、大学1、2年生時は救援登板が多く、先発に回った3年生から長いイニングを任された。

大学野球でのエースには中1日での登板、完投が求められるのが常だ。そんな影響から鍬原はこの夏に右肘に張りが出て秋のリーグ戦は本来の切れがなかった。正直、1位とは思わなかった。

さらにびっくりしたのは2、3位で捕手を指名したことだ。その狙いはどこにあるのだろうか。

▽宮台は日本ハム7位

日本ハムが7位に指名したのが宮台康平投手で、東大から13年ぶり6人目のプロ野球選手誕生となりそうだ。

昨年夏に大学日本代表入りして一躍注目された。ただ、今年に入り左肩痛に見舞われた。

球の出どころが分かりにくかったフォームが素直に変わり、直球は速くなったが、制球力が悪くなり、打者からすればタイミングが取りやすくなった。そこが懸念材料で、他球団は手を出さなかったと思われる。

▽育成選手は32人

今ドラフトは高校生30人、大学生23人、社会人(独立リーグを含む)29人の計82選手が指名を受けた。育成選手は巨人の8人を最多に10球団32人で計114選手が指名された。

独立リーグや育成出身選手がどんどん1軍で活躍する時代になっている。

現在行われている日本シリーズでも、ソフトバンクの甲斐拓也捕手やDeNAの砂田毅樹投手ら育成で入団した選手が出場している。実力が低いと見られがちな彼らがチャンスをものにしてきたのである。そこで提案したい。

球団の支配下選手は70人以内と決められているが、この際その枠を取り払うことを検討する時期に来ていると思う。

3軍のリーグ戦や将来の球団増への対応など選択肢が広がる。プロ野球人気があるときこそ、大胆な改革が求められる。

田坂貢二(たさか・こうじ)のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆