ラグビー日本代表のキーマン、リーチ・マイケルが、2015年ワールドカップ(W杯)イングランド大会以来の主将に復帰した。

10月23日、福岡県宗像市で始まった代表合宿の初日を終えて「責任感が高まる」と言った一方、「周りの意識が高く、リーダー(になれる選手が)がたくさんいる。やりやすい」とリラックスした表情で心境を語った。

ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の下で19年W杯日本大会を目指すチームは、年齢に関係なくチームを引っ張れる若手の台頭が著しい。それでもやはり思う。この男にはキャプテンの肩書がよく似合う。

あふれる闘争心と献身的なプレー。柔和ではにかむような笑顔。所属の東芝グラウンドがある東京・府中市に行けば、練習後に自転車で町を走る庶民的な姿にもお目にかかれる。ジョセフHCが「天性のリーダー」と評するキャプテンの魅力は尽きない。

この秋4試合を戦う日本代表にとって、11月4日のオーストラリア戦は最大の挑戦だ。

過去W杯優勝2度で、W杯2連覇中の最強ニュージーランド代表を10月に破ったばかりの愛称「ワラビーズ」との一戦は、チームの現在地を測る格好の舞台となる。

やや遅れていた感のあるチームづくりにおいて、このタイミングでの主将復帰は何よりの朗報だ。

リーチと言えばあのシーンだろう。15年W杯初戦の南アフリカ戦、29―32の試合終了間際でのスクラム選択。逆転トライにつながる英断を下した選手たちの中心にいたのがリーチだ。

あの日、私も試合会場ブライトンの記者席にいた。勝利が決まった瞬間、歴史の現場に遭遇している高揚感と、目の前の現実が信じられない戸惑いとが同時にやってきた。

だからこそ、大男たち相手に死力を尽くした末に、蛮勇ではなく、冷静に力関係を分析し、最後の大勝負に出た彼らの勇気と体力と技術に感服してしまう。鍛え抜かれたスポーツ選手の真髄を目の当たりにした。

だが、W杯後にリーチの支払った代償も大きかった。まとまった休養が取れないまま疲弊し、ついに16年は代表活動に参加しないという決断を自ら下したのだ。

1年前のトップリーグ中が、最も心身で落ち込んでいた時期だったと思う。

昨年10月。福島県いわき市で行われた試合を取材し、状態を尋ねた際のメモを読み返してみた。「(代表として)出られる体じゃない。出られるメンタルじゃない。選ばれる実力じゃない」。苦悩の言葉ばかりで、今さらながら驚かされる。

「一回断った影響がどれくらい大きいか」とつぶやき、このままずっと代表に呼ばれない可能性を覚悟していた姿が記憶に残る。

そんな苦難の季節を乗り越え、今年6月の代表戦からチームに復帰。今再び主将に選ばれた。

19年大会での史上初のベスト8進出に向け、リーチはエディー・ジョーンズ前HCが率いた代表のキーワードとして知られた「ハードワーク」の必要性を説く。

1次リーグで強豪のアイルランドとスコットランドが同組の今回は、3勝を挙げた15年と同等かそれ以上に困難な戦いが予想される。外野から見れば正直不安は尽きない。

それでも、エディーの猛練習に耐え、勝利に求められる「スタンダード(基準)」を身に染みて知るリーチの言葉には説得力がある。あの歓喜をもう一度。頼れるキャプテンの熱い思いを信じたい。

小海 雅史(こかい・まさし)1982年生まれ。東京都出身。2005年共同通信社入社。06年から福岡支社でプロ野球ソフトバンク、11年から東京でヤクルト、巨人を担当。15年からは卓球やラグビーなどを取材し、15年ラグビーW杯、16年リオ五輪をカバー