人材不足なのか、それとも球団の努力不足なのか。ロッテの来季監督に井口資仁内野手が就任するという報道に、そんな思いを抱かざるを得なかった。

井口は今季を最後に、日米通算21年間の現役生活に終止符を打った元ダイエー(現ソフトバンク)、そしてロッテのスター選手である。

指導者としては未知数なのだから、冒頭の話は失礼かもしれないが、球団がどんな考えで監督選びをしたかと想像すれば、球団OBだし、ファンに人気があるからという理由しか思い浮かばない。

ファンが納得しやすい「スター監督」を求め続ける日本球界らしいといえばそれまでだが、そこからはプロスポーツのトップを走るプロ野球のダイナミズムは感じられない。

▽「社内人事」なのか

かつて巨人のオーナーがチームの不振打開に、いとも簡単に前監督を担ぎ出す監督交代を批難されると「(読売の)社内人事みたいなもの」と言ってのけ、「監督の座はそんなに軽いのか」と疑問視されたことがある。

ロッテの本社は親子の権力争いで大混乱していて、球団経営まで手が回らないのが現状だ。

選手に金をかけないため、有力外国人選手は他球団に移るし、監督選びもOB中心の人選であまり手間をかけているようには見えない。重光昭夫オーナー代行が取り仕切る「個人経営球団」に近い。

▽再建策はあるのか

重光オーナー代行と井口は同じ青山学院大出。関係者によると、監督候補に上がった当初、井口は就任に否定的だったと聞いた。

そりゃそうだろう。ロッテの戦力は熟知しているからで、今季も予想された通りの低迷ぶりだったことでも分かる。

オーナー代行に直接口説かれたか、自らも一度は監督をやってみたいと思ったのかもしれないのだが、監督就任の席でチーム再建策をどう語るか。

井口は4年間、選手としてメジャーでプレーしワールドシリーズ優勝も経験。また、監督とはどうあるべきかを学んでいるはずだ。

球団のピンチに「男気」で引き受けたとは考えたくないし、熱い声援で知られるロッテファンの期待に応えるためにも、井口は最低でも5年ぐらいの契約年数を取り付け、同時に親会社からの資金投入を約束させることが必要だが、信念に基づいて行動できるだろうか。

▽ヤクルトは再登板

12球団で監督交代となるもう1球団はヤクルト。2年前にリーグ優勝した真中満監督がわずか3年で退き、小川淳司前監督が復帰する。

小川前監督は2010年5月に、当時の高田繁監督の休養を受けて監督代行となり、翌年から4年間監督を務めた。

なるほど、11年には中日、巨人と9月まで優勝を争った。

こうした実績が決め手となったかも知れないが3、4年目は最下位となり退任。その後は球団のシニアディレクターとしてチームづくりに携わってきた。

今季のヤクルトはけが人続出とはいえ、選手力層の薄さを露呈して最下位。その責任の一端を担う立場の小川氏で再建に当たるのだから、ここでもロッテ同様に残念ながら人材不足と努力・準備不足を指摘せざるを得ない。

▽野球人気に甘えるな

ヤクルトは9月30日からの中日2連戦(神宮球場)は5、6位の消化試合ながら2万5000人を超す観客を集めた。

今のプロ野球は繁栄期にあるのだが、こうした状況は球団の危機感を薄らげる結果にならないだろうか。よほど意識を高く持たないと、そのうちファンの足は遠のくことになるのは過去が教えてくれている。

▽CSにも進出できず

巨人が10月1日の阪神戦に敗れて11年ぶりの4位が確定。球団初のクライマックスシリーズ(CS)進出を逃し、3年続けてリーグ優勝を逃した。

高橋由伸監督2年目の今季は5連勝と絶好のスタートを切りながら、6月に球団ワーストの13連敗を喫し下位に低迷。7月から菅野智之、マイコラス、田口麗斗の投3本柱を中心に猛反撃に出たが、DeNAとのし烈な3位争いに最後で負けた。

敗因は野手の新戦力が育たず相変わらず阿部慎之助や村田修一のベテランに頼る一方、大金をはたいて獲得したFA組が故障などで働かなかったことにある。

▽目指す野球が見えない

指導者経験がない高橋監督に全てを託すには最初から無理があった。

首位広島から大きく離されると、思い切って投打の若手を起用した。

その中から新人の畠世周が6勝を挙げるなどしたが、その畠も勝負所の最終盤では通用しなくなった。

高橋監督の野球は投げて打つ、シンプルなものだ。だから投手が好投し、打線が得点すれば勝てるが、苦しい展開を打開する「引き出し」を持っていない。

広島のように機動力があるわけではないし、DeNAのようにロペス、筒香嘉智、宮崎敏郎のようにクリーンアップをほぼ固定して戦うにはベテランが多過ぎる。

来年はどんな野球を目指すのかが注目され、高橋監督の真価が問われる年になるが、鹿取義隆GMがどんな構想でチームづくりをするかも見ものである。

▽長嶋監督誕生で狭まった監督選び

球界を引っ張る巨人ほど、スター監督にこだわる球団も珍しい。

もともと人気球団なのだから、選手時代に少々人気がなくてもしっかりした野球観を持った人物を監督に選べばいいと思うのだが、実際はスターでないと監督になれていない。

監督選びが劇的に変わったのは1975年に長嶋茂雄監督を迎えてからだと思う。しかも1度ならず2度まで監督を任せている。

もちろん、長嶋監督はリーグ優勝5度、日本一にも2度なっているからそこそこの成績と言えそうだが、目の前の優勝を目指すあまり選手補強はFAが主で、常に若手の育成は後回しになってきた。そんな長年のツケが回って来ているとも言える。

▽強すぎる本社の意向

原辰徳監督時代に清武英利GMが3軍創設などで球団を変えようとしたが、道半ばで実質的なオーナーの渡辺恒雄氏と衝突して退団した。巨人は親会社の読売新聞の意向に逆らえないことを見せつける“事件"だった。

皮肉なことだが、そうした体質を変えるには今年の4位転落は格好の材料と映るのだが、「7月以降の高橋監督はよくやった」と総括するようなら、元の木阿弥だろう。

田坂貢二[たさか・こうじ]のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆