サッカー好きならば、一度は監督になったつもりで自分好みのチームを編成したことがあるだろう。メッシ(FCバルセロナ)やクリスティアノ・ロナルド(レアルマドリード)のような別格のスターは、誰もが欲しいに違いない。しかし、もう少し現実的になろう。あなたがJリーグ所属の選手でチームを作るとしたら軸に据えるのはどの選手だろうか。

今シーズンはポドルスキの神戸加入もあって、久々に外国籍選手が注目された。Jリーグ初期から比べれば、このところの「助っ人」は小粒感が否めなかった。にもかかわらず、すごいなと思う選手はいるものだ。

J1柏のクリスティアーノは、自分が監督だったら理想の選手だ。もちろん異論もあろう。ただ、ポドルスキが6億円の年俸をもらうなら、クリスティアーノに3億円は払いたい。ポドルスキとの3億円の差は何か。ワールドカップ(W杯)王者の経歴とネームバリューだ。クリスティアーノが試合で見せるクオリティーは常に高く、しかも一定している。言うならば「外れがない」プレーヤーだ。

Jリーグに在籍する外国籍選手が秀でた一芸を持っているのは当然だ。フォワード登録のクリスティアーノは、それを数多く備えている。どのようなプレーでも高いレベルで表現できるのだ。だから、監督としてはこれほど使い勝手のいい選手もいない。ポストプレー、サイドからの攻撃、カウンターと、いかなる戦術にも瞬時に対応できるのだ。

183センチ、83キロの頑強な体☆(身の右にハコガマエに品)(たいく)。その尻のでかさを見て、かつて東京Vに所属した元ブラジル代表のフッキを思い出した。日本人にはいないこの腰回りの肉の厚さを持つ選手は「尻でサッカーができる」。尻で相手をブロックして、自分の間合いに入らせないのだ。

9月16日のJ1第26節、横浜M戦。ここでも尻を生かすプレーがあった。後半立ち上がりの3分に左サイドバックのユン・ソギョンの斜めに入れたパス。クリスティアーノは中澤佑二を背負いながら左足で吸盤に吸いつけるような芸術的トラップでこのボールを収めると、流れるような反転から右足シュートを放ったのだ。シュートはわずかにコースが甘く、GK飯倉大樹の好セーブに遭ったが、あの“ボンバー"を無力にしたプレーは教本に載せたいほどのハイクオリティーだった。

オフサイドラインを打ち破る駆け引きのうまさと、裏に抜け出るスピード。1対1で相手DFを翻弄(ほんろう)するドルブルの巧みさ。ゴール前のポジショニングのうまさ。そしてプレースキックの正確さ。これだけでも助っ人としては十分なのだが、クリスティアーノの価値の高さは攻撃面だけではない。守備面での貢献がとても大きいのだ。

この試合の前半にそれを象徴するシーンがあった。裏へ抜け出そうとした横浜Mのマルティノスへいち早く反応してチャンスを作らせなかったのだ。これだけ本気で走って相手からボールを奪う、もしくは攻撃を遅れせる外国籍のアタッカーは、かなり貴重な存在といえる。

15年シーズンは甲府から期限付き移籍で柏に所属。16年シーズンを前に甲府に復帰したものの、J1第2ステージを前に完全移籍した。わずか半年で柏に戻ってきたときに、本人は「日本でサッカー人生を引退したい」と語っている。真意は特別待遇の助っ人ではなく、チームの一員として長くプレーしたいということだろう。だから本来は攻撃にエネルギーを残しておきたいところでも、守備にハードワークをこなす。

前半は圧倒的に主導権を握られた横浜M戦。同9分には先制点も奪われた。こうなると、横浜Mが守備意識を高めてくるのは必然。しかも、Jナンバーワンの堅守を誇るのだから、横浜Mからゴールを奪うのは簡単なことではなかった。だが、ただ一つ例外があった。それは、セットプレーという“飛び道具"だった。

0―1でリードを許した後半43分、柏はキム・ボギョンの仕掛けからファウルを誘う。位置はペナルティーエリア正面やや右寄り、距離にして25メートル。このチャンスにワンステップからシュートを放ったのがクリスティアーノだった。右足から放たれたボールは、壁をすれすれに飛び越えて、申し分のないスピードでゴール左隅に突き刺さった。GK飯倉にとってはノーチャンスの弾道だった。

「FKというのは自分の特徴であり武器。いつも奥さんから『FKを決めてよ』とよくいわれているんだ」

そういって笑うクリスティアーノ。意外なことに、今季挙げた11点目のうちFKからの得点は初だという。自分の印象としてFKがとてもうまいとすり込まれていたのは、ゴールにならなくても常に惜しいシュートを常に放っていたからだろう。

「速い」「うまい」「強い」。しかも「献身的」と「安定感」の項目まで加わる。2013年、来日したクリスティアーノが初めて所属したのはJ2栃木だった。それを思えば高額でなくとも、いい選手はいるということの証明だ。そして、いまだにブラジル・サッカーは人材の宝庫だ。こんな最高の選手は、監督だったら誰でも欲しい。

岩崎龍一(いわさき・りゅういち)のプロフィル サッカージャーナリスト。1960年青森県八戸市生まれ。明治大学卒。サッカー専門誌記者を経てフリーに。新聞、雑誌等で原稿を執筆。ワールドカップの現地取材はブラジル大会で6大会連続。