今年も甲子園では高校球児たちの熱戦が繰り広げられている。来年にはこの中から何人もの若者がプロ野球デビューを果たすことになるはずだ。こうした新人の中には初年度から活躍してその後も継続して活躍できる選手と、初年度こそ活躍したもののその後はパッとしない選手がいる。

その違いは何かを考えると、相手球団から研究されて欠点が見つかるなどして、初年度のレベルのままでは通用しなくなるのが一般的だ。しかし、個人競技であるプロゴルフやモータースポーツの世界で初年度から活躍する選手というのは、得てしてそのまま王者になるなど大きく活躍することが多い。自分との戦いが主体となるプロゴルフなどの個人競技とモータースポーツのドライビングには、自分がコントロールする技術に比重が置かれている点において似ている部分があるのだろう。

モータースポーツの世界ラリー選手権(WRC)にも期待の新人が登場した。トヨタのテストドライバーとしてチームに帯同しながら、今季第6戦のラリー・ポルトガルからサードドライバーとしてデビューした26歳のフィンランド人、エサペッカ・ラッピだ。そのラッピが参戦からわずか4戦目となるラリー・フィンランドで勝利、初優勝を母国で飾るという快挙を成し遂げた。

デビューから数戦で活躍したドライバーといえば、F1の世界では1996年からF1に参戦したジャック・ヴィルヌーブが思い出される。その前年に当時、米国で人気だったカート(CART)のチャンプカー・シリーズで王者を獲得したヴィルヌーブは、90年代に製造者部門を5度制覇するなど強さを誇っていたウィリアムズに移籍すると、鮮烈なデビューを果たす。

開幕戦のオーストラリア・グランプリ(GP)でいきなりポールポジション。惜しくも2位に終わった決勝でもマシントラブルが起きる終盤まで首位を快走してみせたのだ。デビュー4戦目のヨーロッパGPで初優勝を果たしたヴィルヌーブは、翌97年にはミヒャエル・シューマッハーとの激しい争いを制して、デビュー2年目にして世界王者となっている。

トヨタのラッピも、WRC2というWRCのひとつ下のカテゴリーで昨年王者となり、その実力は誰もが認めるところ。しかし、WRCの世界もまた、当時のF1のように厳しいライバルたちが待ち受けている。4度世界王者になったセバスチャン・オジェ(フォード)や、同じトヨタのエースでありWRC通算17勝を誇るヤリマッティ・ラトバラだ。

モータースポーツの世界以外でも、プロ野球田中将大やプロゴルフの松山英樹のように、新人時代に活躍するだけでなく、その後も大活躍を続けて、先輩たちの壁を破るアスリートは、本当に稀だが確実にいる。そうしたアスリートの多くは良い意味でマイペース。ラッピもまた、そんな世界トップクラスのアスリートへと進化する可能性を大いに秘めたマイペースな部分があり、ここからどんな風に先輩たちの壁を破っていく存在となるのか、大いに注目してみたい。(モータージャーナリスト・田口浩次)