7月30日に神宮球場で行われた高校野球西東京大会決勝で、清宮幸太郎選手の早実高が東海大菅生高に敗れて甲子園出場はならず「清宮の夏」が終わった。高校野球では異質とも言える大フィーバーを残して。

今後は「進学かプロ入り」の進路に焦点が当たることになる。

▽ヒーロー待望論

あの清原和博氏(PL学園高)や松坂大輔(横浜高、現ソフトバンク)も超高校級の抜きん出た実力で注目されたが、ここまでマスコミは過熱していなかった。

ほぼ首都圏に限るとはいえ、清宮選手の一挙手一投足がスポーツ新聞の一面を大々的に飾り、その通算本塁打数が高校球界最多とされる「107本」に迫ると、NHKを含めた各テレビ局が取り上げる。今までにも増して「ヒーロー待望論」が過熱した。

▽スポーツ一家

父親の克幸氏は早大ラグビー部の有名選手であり、社会人チームの監督としても日本一の実績を誇り、母親の幸世さんは慶大ゴルフ部で主将を務めた。

このスポーツ一家で育った清宮選手は小さい頃からラグビー、水泳、テニス、相撲、陸上など幅広くスポーツに接し、結局野球の道を選んだ。

野球一筋に固執させなかった両親の「子育て」も世間の興味を引く。進学した早実高は王貞治氏を輩出した野球の名門。さらに裏表のない誰からも好かれる性格も相乗効果となった。

ある意味、これほど恵まれた高校球児はそうはいなかったと思うが、持って生まれた長打力を確実に開花させて本塁打を打ち続けた、技術面の才能があっての注目度だった。

▽最初は米国で注目浴びる

清宮選手が最初に注目されたのは米国だった。リトルリーグ時代の世界選手権で本塁打を量産して優勝に貢献。米メディアが付けたニックネームが「日本のベーブ・ルース」だった。

現在身長184センチ、体重約100キロの太すぎる体は、高校入学当初は懸念材料と指摘された。打守走の面においてである。

ところが、家族で取り組む体調管理などでそれを払拭する。

早実高1年で公式戦7本、練習試合28本だった本塁打は2年で9本と35本、3年は11本と17本と順調に伸ばし計107本塁打となった。

▽遠くへ飛ばす打法に

本数もさることながら、年々遠くへ飛ぶ弾道になっている。また、107号目は外角寄りの落ちる球を左中間に打ち返し、技術のレベルアップを見せつけた。

9月にカナダで行われる「18歳以下(U―18)ワールドカップ」があり、この代表候補に選ばれていて「高校生最多記録」を達成する可能性はある。

▽清原氏は64本

この高校通算本塁打は練習試合も含んでおり、もちろん日本高校野球連盟に公認された記録ではない。狭い校庭での試合もあり、学校の方針などで試合数も大きく異なる。

107本は兵庫・神港学園高にいた山本大貴選手(社会人のJR西日本でプレーし現在は引退)で2012年夏までに打った本数だ。

ちなみに日本ハム・中田翔の大阪桐蔭高時代は87本、清原氏は64本、松井秀喜氏(石川・星稜高)は60本、日本ハム・大谷翔平(岩手・花巻東高)は56本だった。

▽早大一本からの変化?

清宮選手は早実高から早大への「入学枠」に他選手同様、手続きはしている。ただ、ここに来て早大進学一本からの変化も予想されている。

投手と違い、大学や社会人からプロ入りする打者はプロのレベルに追い付くには時間がかかる。

1年目に126試合に出場し打率3割4厘、31本塁打、78打点と高校出新人の記録を塗り替えた清原氏は例外で、清宮も2、3年は辛抱しなければならないだろう。それでも過去の記録は高校出打者の優位を示している。

通算本塁打記録を見ても、王氏の868本を筆頭に、2位野村克也氏の657本など、高校出の選手が上位を占める。

ベスト10に入っている大学出選手は4位の山本浩二氏(法大、536本)と10位の金本知憲阪神監督(東北福祉大、476本)の二人だけ。

田淵幸一氏(法大)は474本の11位、長嶋茂雄氏(立大)は444本の14位である。

▽夢はメジャーでの本塁打王

今春の選抜大会出場時に、清宮選手はアンケートに答え「将来の夢はメジャーでのホームラン王」と書いた。自分がスタートを切った米国でのプレーは頭にあるようだ。

早大進学かプロ入りか、はたまた即メジャー行きか。プロ入りした後も大学の通信課程などで勉強するプランと、さまざまな推測が流れている。

いずれにしても高校生が日本のプロに進む場合は甲子園大会終了後からドラフト前の10月12日まで受け付けが行われる「プロ志望届け」が義務づけられている。

▽本人の意思

清宮選手の進路決定において、トップアスリートでもあった両親の希望は無視できないだろう。親が小さい頃から知り尽くしている子どものフィジカル面や技術面で不安があれば、大学で鍛えることも選択肢となる。

それでも、最後は清宮選手本人の意思が決め手になると思う。

「高校野球は終わったが、これから長い野球人生が待っている」と言っている。大学を経るのか、即日本のプロ野球か、それともメジャーか、どの道が最善と考えるのだろうか。

大学野球では、順調に伸びる選手と成長できない選手の両方を見てきた。自分で考える時間が増えるのがいいのかどうかもある。

技術的に見れば、プロとアマでは雲泥の差があるのは確かなのだが。とりわけ長距離打者を目指すにはいい指導者と出会うことは重要だ。ただ、ドラフトではどの球団に当たるかは分からない。

日本のプロ野球はその人気面から特別扱いするのは目に見えている。その点、メジャーではマイナーからのスタートとなり2、3年はじっくり鍛えられる。18歳の決断に注目したい。

田坂貢二(たさか・こうじ)のプロフィル

1945年広島県生まれ。共同通信では東京、大阪を中心に長年プロ野球を取材。編集委員、広島支局長を務める。現在は大学野球を取材。ノンフィクション「球界地図を変えた男 根本陸夫」(共著)等を執筆